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2004/09/12

池澤春菜 タ・レ・ダ・ロ・ー・カ

池澤夏樹さんの『マシアス・ギリの失脚』は読書の愉しみを満喫できるオハナシ。
本書の終盤で同性愛の二人組の殺し屋(とても感じのいい人達であるのがおかしい)が、ある密室での暗殺の手口を教える場面があります。(ここではもちろん書きません)それはすごくユニークなものなんだけれど、でもアラビアンナイトのなかで、すでにそれが書かれていたんですよね、と殺し屋は言う。「日の下に新しきもの何ひとつなし」――

ここのところで、ぼくは稲垣足穂の『少年愛の美学』を思い出して、にやりとした。
南方熊楠の倫敦時代のこういう話。

ある時、倫敦の英国学士院の若手連中のあいだに、「東西の書典に曾て見ざる淫法一つだにありや?」が論議されていた席上へ、青年南方熊楠が顔を出した。ちょうどよかった、彼は両足のあるエンサイクロペジアだから、早速たずねてみよう。こうなって南方は即座に、「女子がハリカタを以って男子の後庭を犯すことなし」と答えた。いかにも!そればかりか女子が男子にペデラスティを強いることもある筈なしと、一同を感服させてしまった。ところが其後、南方は、バートン訳の『千夜一夜』の中に次のような箇所を見付けた。久しく別れていた女が一地方の王となり、曾ての男が流浪してやってきたのを弄ぼうとして、自ら男装をして伝いよる場面だった。「ふーむ、あらざる所なし!」と今度はご本人が唸ってしまった。

池澤先生、これ下敷きにしていますね、きっと。
本書ほかにもたくさんこういうのがありそうです。

さて、池澤さんは福永武彦の子息であることはよく知られていますが、ある人々にとっては池澤春奈のパパであるということの方が、「へぇ」らしい。
池澤春奈さんの公式サイトはこちら
ブログをいくつかあたると、池澤夏樹さんは、この夏から居をフランスに移してしまわれたようだ。こちらにその話がありました。

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コメント

 こんにちは。「南国読書」のくるりです。
 先日はトラックバックありがとうございました。
『マシアス・ギリの失脚』、池澤さんの遊び心いっぱいで楽しい本ですね。それまで、それ以後のどの池澤作品とも違った味わいのある、なんとも不思議な存在です。
 春菜さんが池澤さんの娘さんと知ったのはかなり前のことでしたが、その命名の仕方には、池澤さんの意外なお茶目さというか、素直さを発見して感銘を受けました。
 今ごろはもう、パリの空の下にいらっしゃる池澤さんの、これからの著作活動におおいに期待しています。

投稿: くるり | 2004/09/21 10:30

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