芝浜、畳の新しいの、クリスティ
久しぶりに、三代目三木助の「芝浜」を聴いた。むかし持っていたテープより、導入のところが少し短い。
「翁の句に、あけぼのやしら魚白きこと一寸、というのがありますが」ではじまるところは一緒なのだが、そのあとに船頭と粋な客、野暮な客の話があるのを昔は愛好していたのだ。もうテープは無くしてしまったが。
しかしこの咄、最後の「よそう夢になるといけねえ」ですぱっと終る所がカッコよくて何度聴いてもしびれる。(古い表現だなぁ)
芝の浜で拾った財布には四十二両、ああこれで、おらぁ、あしたっから働かなくてすむ、ありがてぇじゃねえか、と女房に酒を買いに走らせ、友達呼んでドンちゃん騒ぎ――と女房が叩き起こす。おまいさん、仕事行っつくれよ、釜の蓋があきゃあしないじゃないか。なにぃ、あの四十二両は夢ぇ?金ぇひろったのは夢で、友達呼んで騒いだのは本当ぅ――。なさけねぇ・・・よし!おらぁもう酒飲むなぁ、やめた。道具出してくれ、仕入れに行ってくる。
数年後、店をもって若いのをつかうまでになった魚勝に女房がことの真相を涙ながらに打ち明ける。おまいさん、あの四十二両は本当だったんだよ。ゆるしておくれ・・・
さてこの場面に入る直前、なんかいい匂いがする(じつは燗をつけていたことがあとでわかる仕掛け)というので、ああ畳が新しくなっているのかと勝は得心する。「やっぱりいいもんだなぁ、畳の新しいのと、嬶ァの・・・・古いのは」
ここで小さな笑いをとって、後は一気に泣かせの場面に入る間合いだ。
今日は気分転換に軽いミステリでもと、アーロン・エルキンズの『断崖の骨』(ハヤカワ文庫/1992)を再読していた。こんな一節があった。人類学者にしてスケルトン探偵のオリヴァーと新妻のジュリーの会話。
「・・・アガサ・クリスティが人類学者と結婚して何て言ったか知ってるかい」
「彼女が人類学者と結婚したなんて知らなかったわ」
「そうなんだよ、マックス・マローワンという有名な学者だ。彼女が言うには、人類学者を夫に持つと最高だ、年をとればとるほど、興味を持ってくれる」
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コメント
こんにちわ、リニューアルおめでとうございます。
この頃ほんとにブログが増えましたが、かわうそ亭さんのは、すっきり見やすくて読むところが沢山で嬉しいです。
これからもよろしく。
人類学者と魚勝さんはオトコの鏡ですね(笑)
投稿: なぎ | 2004/10/29 00:06
こんにちわ。こうしてコメントをいただくようになると、いよいよ新居も友達が来てくれるようになったなぁという気になって嬉しいです。やっぱり、サイトの新しいのと、嬶ぁの・・・・(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2004/10/29 00:15