英国の執事のこと
たまには洋書も読んでおかないと勘がにぶる。カズオ・イシグロの『The Remais of the Day』にとりかかったものの、まったくはかどらない。別に急ぐ必要もないので、一日1ページか2ページずつ読み進める。(もっとももうじき、ネルソン・デミルの新作『Night Fall』が到着するはずなので、それがくるとまた後回しにすることにはなるのだが)
ところで本書の第二章に、英国の執事とはどういうものであるかについて、主人公が延々と考えを述べる箇所があった。本物の執事は控え目でどんなときにも沈着で品位を失わない。こういう使用人は世界広しといえど英国以外にはいない、とかいうのだな。おもわずにやりとした。
というのにはわけがある。
じつは二三日前にピーター・ウィムジイ卿ものを読んだばかりだった。気散じの探偵業が三度の飯より好きだという主人に仕えるのが執事のバンター氏。
「バンター!」
「はい、御前」「先代公妃がおっしゃるには、例の実直なるバターシーの建築家が、風呂桶の中に死体を見つけたそうなんだ」
「それはそれは、御前。何よりでございます」
「全くだよ、バンター。いつもながら的確な言葉を遣うね。僕もイートン校やベイリオルでそういうこつを教えてほしかった」
『誰の死体?』
ドロシー・L・セイヤーズ
浅羽莢子訳
(創元推理文庫)
なるほど、こういう探偵の相棒はさすがに英国にしか存在しない。(笑)
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