父われは
母親と幼子の情景はいつもこころを和ませる。父親は役にすぎないが、母親はいつも地である。もっとも女にはまた違った意見があるかもしれない。
『セレクション歌人22 中川佐和子集』(邑書林/2004)から。
母のことすぐに児らは言い父なるは聞かれて答える存在らしき
しゃくりあげ泣きいし吾子は寝入るらし吐く息のやや太くなりゆく
子が抱ける犬もわが子も幼くて幼きものは淡く匂うも
さす傘に子を引き入れて叱るとき地上に母と子のみとなりぬ
たどたどと本を読みいる長の子の脇に弟はうなずきており
為り手なき蛇の端役を引き受けしわが子に緑羅の光る布買う
期待して子らが見るゆえ母われは凧を上げんと野に走り出す
今度、生まれ変わったら母になってみたいと、ときどき思う
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