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2004/12/02

棒に振らなきゃ意味がない

人生棒振り物語、といってもオーケストラの指揮者の話ではない。文字通り人生を棒にふる物語。

・・・少年が父親から、お前は恐ろしい鮫コロンブレの犠牲に選ばれたのだ、あの鮫は生涯お前を追って食い殺そうとするだろう、だから絶対に海には近づくな、と言われる話。
だが海への情熱は捨てがたく、結局息子は船乗りになり、コロンブレを逃れて海から海へと狂おしい旅を続ける。ちょうど白鯨を追って海から海へ狂おしい旅を続けるエイハブ船長の陰画のように。が、その彼もやがて老いて疲れ、鮫に追いつかれてしまう。ところが鮫は、彼を食い殺しはしない。「なぜって、おれは、おまえが思いこんでいたように、おまえを食うために七つの海をついて回ったんじゃないからさ。これを渡すよう海の王さまに命じられただけだったのだ」(武山博英訳『現代イタリア幻想短編集』図書刊行会)
こうして鮫が舌に載せて差し出したのは、幸運と力と愛と心の平安をもたらす真珠だった。だがもう遅すぎる・・・・・もはやコロンブレも疲れはてている。自分の人生を棒に振ったのみならず、自分に取り憑いた怪魚の一生まで棒に振らせてしまった、というダブル棒振り物語。
柴田元彦さんの『猿を探しに』(新書館/2000)に紹介されているブッツァーティの「コロンブレ」というお話。 柴田さんが書いておられるように、あるタイプの人は人生を棒に振るお話に慰めを求めるようだ。これと反対に、記憶術やら速読やら無駄のない時間の有効活用やら人生の成功なんてお話が大好きだというタイプもいる。お互いが相手のことをバカだと軽蔑しあっているのだが、皮肉なことに、人生を棒に振るお話に慰めを求めるような人が「成功」していることもある。半ズボンの東大助教授はその典型ではなかろうか。

ところで、この本(『猿を探しに』)のイラストを描いている「きたむらさとし」さんの絵はなんとも魅力がある。ロアルド・ダールの童話のイラストをやっていたクエンティン・ブレイクにちょっと雰囲気が似ているなぁと思った。たまたま、活動の拠点はこの画家もロンドンらしい。ちょっと注目。

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