相手は犬
プロのデザイナーでなくとも自分でホームページをつくったりしたことがある人は、ローマ字のフォントを何にするかいろいろためしたことがあるのではないかと思う。
そのなかにギル・サンズという活字体がある。なかなか人気のある書体で、視認性が高いからだろうか、いろんなインターネットのサイトに使われているようだ。見本を以下に示す。
丸谷才一さんの『猫のつもりが虎』(マガジンハウス/2004)を読んでいたら、この書体をつくったエリック・ギルのことが書いてあった。
ギルには二十冊ほどの著書があるが、これはむしろ余技である。本職のほうでは、二十世紀イギリスの代表的な工藝家で(だから柳宗悦が会はうとした)、活字のデザイナーで(これがすばらしい)、彫刻および木版画の巨匠であつた。
しかし、丸谷さんのエッセイの眼目(?)はもちろんそんなことではない。この時代のイギリス人らしくこの人物には詳細な日記をつける習慣があったらしく、それによれば——
かれは妻帯者だつたが、たびたび姦通をおこなつた。短期間のものも、長くつづくものもあつた。場所は主として自分の家。領主権主義といふのださうだが、女中に手をつけるのが好きだつたし、それ以外にも、知り合ひの男の妻や恋人を見るとたちまち気持ちを動かすたちだつた。近親相姦もした。相手は二人の妹および三人の娘。獣姦も試みた。相手は犬。
やれやれ、これからはこの書体を見ると「相手は犬」というのが浮かんできそうだ。(笑)
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