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2005/03/18

茂吉と戦争

今読んでいる『作歌四十年』から戦中の茂吉の歌を抜いてみる。

 国のために直に捨てたる現身の命の霊を空しからしむな
 神と共に進み進みて絶待に迫りて迫る包囲の大軍陣
 敵軍の根拠の滅び徹底して大きアジアの暁明いたる
  『寒雲』

 大きなる勝鬨あげてもろともに迎ふる皇紀二千六百年
 ひたぶるに命ささげしもののふをわが天皇は神としたまふ
 おほきみのおほきまにまにみ民らが進むあゆみのおとをこそ聞け
 大君の全けくもぞ統べたまふひとついきほひのくにの現実ぞ
 (現実:うつつ)
 天とほく南のくにに親しむとすめらみ軍はやも動きぬ
 (軍:いくさ)
 大君は神にしいませ永遠の平和をしぞみちびかせたまふ
 (永遠:とことは・平和:たひらぎ)
 あめつちにすめらみくには日に新たいよよ新たに栄ゆくものぞ
  『のぼり路』

 つらぬきて徹らむとするいきほひに碧眼奴国の悔をゆるさず
 くに民のひとりびとりのやまと魂の炎とのぼる時をし知らむ
  『いきほひ』

 何なれや心おごれる老大の耄碌国を撃ちてしやまむ
 「大東亜戦争」といふ日本語のひびき大きなるこの語感聴け
 皇国の大臣東条の強魂をちいはやぶる神も嘉しとおぼさむ
 (皇国:すめぐに・大臣:おとど)
 神もゆるしたまはぬ敵を時もおかず打ちてしやまむの大詔勅
 (敵:あた・大詔勅:おおみことのり)
 大きみの統べたまふ陸海軍を無畏の軍とひたぶるおもふ
 もろもろは声をかぎりにをたけびし十二月八日を常にこそおもへ
  『とどろき』

写していてさすがにいやになった。こんな歌がまだまだ延々と延々と続くのである。これをいったいどう考えたらいいのか、正直わたしは途方にくれる。

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