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2005/04/07

三木武吉という男

『湛山除名 小日本主義の運命』佐高信(岩波現代文庫/2004)から、三木武吉のエピソード。

戦後まもなく、郷里の高松から衆議院選挙に立った三木を、対立候補が立会演説会で、こう攻撃した。
「ある有力な候補者は、あろうことか東京で長年にわたってつくったメカケ三人を連れて郷里に帰り、小豆島に一緒に住まわせている。かかる不義不道徳な輩を、わが香川県より選出すれば、県の名折れであり恥辱である」
これを聞いて登壇した三木は、
「先ほど聞いておると、ある無力なる候補は、ある有力なる候補者は、といったが、つまりそれは私のことを指したのである。私はたしかに有力な候補者で、私のことをいった男が無力な候補者であることは明らかである。その無力な候補者は、私がメカケを三人も連れて帰ったといっているが、物事は正確でなければいけないので訂正しておきますが、女の数は三人ではありません。五人であります」
と切り返して満場の爆笑を買った。そして一転、しんみりした調子で、
「高松を飛び出してから、随分、私も苦労しましたが、その間には、いろいろな事情から多くの女との関係ができました。そのかかわりを持った女たちは、いずれも年をとっていわば今は廃馬であります。けれども、彼女たちが私を頼る限り、私の都合で捨て去ることはできません。この人々を養うことは、私の義務だと思っております。それも三人じゃない、五人です。訂正しておきます」
と続けて、割れるような拍手をもらったのである。

ははは、政治家はまず役者でなければならないなあ。ヘボには絶対絶命と見える危機もプロには好機にすぎないという不思議な局面が勝負事にはあるものだが、これもそういうもののひとつだろうか。あるいは、道徳や正義を押し立てた非難には人情で応戦するのが有効だということか。まあ、さすがに現代ではもうこの手は使えないだろうなあ。

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コメント

我三木家も祖父(正七)、父(丈夫)とも香川出身で確か父は丸亀生まれと聞いているが、小さい頃父か祖父からうちは三木武夫とは親戚ではないが、おじいちゃんは三木武吉いう人と従兄弟であると聞いたことがあります。武吉という人は明治の政界では有名だったが、若い頃はかなりの悪(ワル)だったと聞いていました。しかし私の好きな性格なので好感が持てます。今の政治家は大変ですね!
本当に親戚関係があるのか無いのか四国、大阪の親戚ともあまり付き合いも無く、父も早く(59で)他界して私はもう20年もアメリカ住まい、まあ同姓で偉い人がいたものだと感心しております。写真を見るとなんとなく祖父に似ていない事も無いが!うちの娘も武吉同様San Franciscoで弁護士になっています。 Atlanta, GA

投稿: 三木勉 | 2007/09/17 13:51

たいへん興味深いコメント、どうもありがとうございます。
1955年に三木武吉がなしとげた保守合同—自由民主党の発足から52年です。たまたま、これは安倍晋三という総理大臣の人生ともそのままぴたりと重なるわけで、それなりに感慨深いものがあります。
政治家の力量とはなにか、というのはなかなか同時代では見えにくいもののようです。個人的には、わたしも三木武吉のような人間は大好きなタイプですが、現代ではよってたかってメディアにつぶされてしまうかもしれませんね。

投稿: かわうそ亭 | 2007/09/17 18:05

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