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2005/04/20

新教皇と『ダ・ヴィンチ・コード』

雨の休日。カウチに寝そべって『ダ・ヴィンチ・コード』を終日読む。
ちょうど新しい教皇が選出された日だった。新教皇ベネディクト16世はヨハネ・パウロ2世の側近中の側近ということなので、教義的には自由化の方向には向かわないと見られる。ネタばれをするつもりはないのだが、このミステリーにはオプス・デイ(Opus Dei)というカトリックの組織が重要な役割を演じる。
オプス・デイは、1928年にスペインで創設された教団だが、1982年にヨハネ・パウロ2世によって、カトリック教会の正規の位階制度に含まれる属人区(プレラトゥーラ・ペルソナーリス)として認可された。その教義は、ヨハネ・パウロ2世の超保守派の立場をさらに強烈にしたようなもので、前教皇とのつよい結びつきが指摘されているらしい。

『ダ・ヴィンチ・コード』の世界では、新教皇はヨハネ・パウロ2世の超保守派の軌道修正をはかる人物が選出され、そのことがオプス・デイにとっての危機になるのだが、現実世界では、どうやらオプス・デイは安泰ということなのだろうか。

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本書でのオプス・デイのあつかいは、どちらかといえばカルトにちかいような描き方だと思う。ネットの検索でも、やはりいろいろな陰謀説のなかであまり好意的な意見はない。まあ、無信仰な人間がとやかく言うようなことではないから、興味のある方は自分で調べてください。

ところで、新聞やテレビの報道ではPopeは「法王」という表現で統一されているようだ。『ダ・ヴィンチ・コード』では「教皇」という表記になっている。調べてみたら、カトリック中央協議会のサイトでこういう説明があった。
「ローマ法王」と「ローマ教皇」、どちらが正しい?

「新聞を見ると『ローマ法王』と書いてあり、教会の文書には『ローマ教皇』と書いてあります。どちらが正しい表記ですか?」 このような質問が多く寄せられます。簡単に説明します。
教会では「ローマ教皇」を使います。
以前はたしかに、日本のカトリック教会の中でも混用されていました。そこで日本の司教団は、1981年2月のヨハネ・パウロ2世の来日を機会に、「ローマ教皇」に統一することにしました。「教える」という字のほうが、教皇の職務をよく表わすからです。
その時以来、たびたびマスコミ各社に「ローマ教皇という名称を使ってください」とお願いしていますが、残念ながら実現していません。

バチカン大使館は、「ローマ法王庁大使館」

ところが東京都千代田区三番町にある駐日バチカン大使館は「ローマ法王庁大使館」といいます。なぜでしょうか?
日本とバチカン(ローマ法王庁、つまりローマ教皇庁)が外交関係を樹立した当時の定訳は「法王」だったため、ローマ教皇庁がその名称で日本政府に申請。そのまま「法王庁大使館」になりました。日本政府に登録した国名は、実際に政変が起きて国名が変わるなどしない限り、変更できないのだそうです。
こうしていまでも「法王」と「教皇」が混用されているのです。
皆様には、「教皇」を使っていただくよう、お願いする次第です。

というわけで、当事者がそう呼んでくださいと言うのなら、「教皇」にすればいいのにと思うのだが、まあ、これについても、それほどこだわりがあるわけではない。

肝心の『ダ・ヴィンチ・コード』の出来だが、これほど刺激的で面白い材料を使いながら、ここまでお粗末なオハナシが書けるのは、ある意味ですごい。プロットは陳腐、登場人物は平板、ストーリーはご都合主義で無内容。おやまあ、これは「名探偵コナン」かね、と読み終えてあきれかえった。
「へぇ」の一種として推薦するならともかく、こんなものを平気で絶賛するミステリ批評家というのは、いくら商売とはいえ、恥知らずもいいところでありますね。

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コメント

 こんばんは。
「教皇」が正しいんですね。知らなかったです。今度友達と話す時にネタにさせていただきます。「知ってた?教皇が正しいんだよ」って(笑)
「ダ・ヴィンチコード」はもうさくっと読める以外にはいいとこない本というか。もっと主人公が魅力的だったら、まだ良かった気がします。あ、でももうすぐフランスに旅行する友人には薦めました。土曜サスペンスのごとく名所めぐりしてる本ですから。

投稿: ぎんこ | 2005/04/20 23:36

 こんばんは。
 『ダヴィンチ・コード』、僕も読みました。絵画や彫刻が好きで、フランスの文化に興味があるので、僕は好きでした。
 日本で「教皇」が「法王」になってるのは、ひょっとしたら「皇」の字を避けたのかもしれませんね。

投稿: Keiten | 2005/04/21 00:59

ぎんこさん うん「土曜サスペンス」の名所めぐり。(笑)でもいいかもしれない。

keitenさん なるほどそれは考えませんでしたが、あるかもしれませんね。ネットの掲示板なんかでは「法皇」なんて表記もみかけますが。(笑)

投稿: かわうそ亭 | 2005/04/21 22:35

はじめまして。
法王ではなくて教皇と呼んで下さい、と懇願されると、何故に法王はヤなのか好奇心が湧いて来る。
教皇、教皇、教皇...と、私は繰り返して呼ぶ癖をつけ始めてしまってますが。
「ダヴィンチ コード」より少しは大目に見てあげよっかな、が「天使と悪魔」でした。しかしダン ブラウンは小説の終わり方に必死で苦労している作家じゃないか? と、またまた思わされた著書でした。

投稿: Io | 2005/04/22 23:33

Io さん はじめまして。『天使と悪魔』もやはりラングドンが出てくるのですね。蘊蓄の多い本は嫌いではないので、もしかしたら読んで、また悪口書くかもしれないなあ。(笑)
これからもよろしく。

投稿: かわうそ亭 | 2005/04/23 20:12

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