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2005/05/17

虎よ、虎よ

keitenさんのブログ「雲の中の散歩」(ここ)にライオンとトラについての面白い記事があった。フランス語の熟語に
 le cœur de lion
 le cœur de tigre
というのがあって、直訳すればそれぞれ「ライオンの心臓」、「トラの心臓」となるが、熟語としての意味は、前者が「勇猛な心」、後者は「残忍な心」という意味になるのだとか。(フランス語でcœurは心臓という意味)
同じネコ科の猛獣なのに、なんだかトラの方が冷遇されている。(笑)
C.S.ルイス の『ナルニア国物語』シリーズでもライオンのアスランはあからさまなキリストの象徴でしたから(だからこのファンタジーはわたしは大嫌いである)キリスト教世界ではライオンの方が正しい勇猛さを意味しているのかなあ。
ちなみにエリアス・カネッティの『群衆と権力』にはこのような記述がある。

権力の決定的行為が人間たちと同様に動物たちのあいだでももっとも顕著に見られる補足の瞬間は、常に人間たちにもっとも強烈な印象を与えてきたし、虎や獅子のような猫族の猛獣に対する人間たちの迷信的な畏怖の念もそれにもとづいている。(中略)この行動のエネルギー、その冷酷さ、その遂行にあたっての自信満々たる態度、殺す者の疑問の余地もない優越性、猛獣が自分の好きなように獲物を選べるという事実——こうしたすべてのことがその強大な威信に寄与してきたのである。われわれがそれをどう考察してみたところで、それが権力の最高の集中であることに変わりなく、それ自体が、あらゆる国王は獅子となることを望んできたという拭いがたい印象を人間に与えている。
上巻302頁

中島敦の『山月記』で、博学才穎ながら性、狷介、自ら恃むところすこぶる厚く、賎吏に甘んずるを潔しとしなかった李徴が変身しなければならなかったのは虎でした。中国には獅子はいないから、というのではなく、やはりここは虎でなくては様にならないような気がする。
ライオンとトラはかくして、昼と夜、太陽と月、ビートルズとローリングストーンズ(?)という関係なのであります。
そういえば、ウィリアム・ブレイクの「虎よ、虎よ」も夜の森ですね。

  Tiger, tiger, burning bright
  In the forests of the night,
  What immortal hand or eye
  Dare frame thy fearful symmetry?

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コメント

こんにちは。コメント有難うございました。

そう言えば、聖ヒエロニウスもライオンを手懐けていましたね。

関連記事も、宜しければご覧下さい:
アトリエのアルブレヒト・デューラー/Albrecht Duerer in Gehaeus [ 文化一般 ] / 2005-01-10

それから、西京極でもトラはライオンより弱かったようです。

投稿: pfaelzerwein | 2005/05/17 21:12

トラックバックありがとうございます。
さすが読書家のかわうそ亭さんですね。広辞苑の記述に頼っている僕と違って、知識に裏づけがあります(^_^;)
ただ、1つだけフランス語のつづりについて指摘させていただきますと、「心臓」の意味のフランス語は、正しくは「cœur」とつづります。「合字」といって、「o」と「e」がくっついたかたちです。

投稿: Keiten | 2005/05/17 22:10

pfaelzerwein さん
アトリエのアルブレヒト・デューラーの記事、拝読しました。なるほどデューラーの「書斎のヒエロニウス」には、なかなか立派なライオンが眠っていますね。「ジェロームさんってば、うちではペットは飼ってはダメっていってるじゃない」なんて大家に文句言われそうですが。(笑)そういえば、『クォ・ヴァディス』でもキリスト教徒のリギアはライオンの友達だったような。ドイツにいらしても西京極球場の阪神・西武戦がチェックできる時代なんですねぇ。(笑)

keiten さん
合字やアクサンテギュは、日本語のhtml環境でも大丈夫なんですが、メールなんかではよく文字化けするんですよね。わざとoeにしたんですが、まあ、これはフランス語をやっていらっしゃる方には、失礼だったかもしれません。ごめんなさい。ところで今日の「笑っていいとも」のゲストは岸恵子で、フランス語の方が英語なんかよりずっと発音は簡単よ、日本語の母音と違うのをちょっとだけ覚えればいいんだもの、なぁんて言ってました。本当でしょうか。マイクル・Z・リューインのミステリでアメリカ人がフランス語の悪口を言う場面——
「ロベスピエール」わたしはフランス風に発音してみせた。
「まるで、喉にカエルがいるようだな」
「あんたは、フランス語の発音のコツをつかんだようだ」
(『死の演出者』)

投稿: かわうそ亭 | 2005/05/18 00:02

大変失礼しました。かわうそ亭さんほどの読書家さんが、「合字」をご存じないわけはなかったですね。
フランス語の発音は英語よりも簡単、ということですが、確かにそれは僕も感じます。去年の夏、アテネ・オリンピックの開会式を見たんですが、各国の選手団が入場してくる際に、それぞれの国名を、ギリシャ語、英語、フランス語の3カ国語で言ってたんです。それを聞いての印象なんですが、「英語の発音が1番ヒネクレてるなぁ」と思いましたよ(笑) 別に英語を馬鹿にしているわけではないんですが、発音を聞き比べた時の率直な感想として、そう思ったのです。
「喉にカエル」というのは、フランス語の特徴的な「r」の発音のことですね。「水を含まずにうがいをする」感じで発音するのがコツです(笑)

投稿: Keiten | 2005/05/19 22:05

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