朝鮮の核
北朝鮮がいよいよ核実験を行うという観測が強まっている。
これとは直接は関係はないのだが、イマニュエル・ウォルターステインの3月15日付のコメンタリー(ビンガムトン大学フェルナン・ブローデル経済・史的システム・文明研究センターのサイトに毎月1日と15日に掲載される)「東アジアと世界・10年後」が興味深い内容だった。(ここ)
要点は東アジア、すなわち中国・日本・南北朝鮮で構成される三つの地域が今後の10年間で、世界システムの中でもっとも中心的な役割を果たすようになるかもしれないという意見である。これらの国々が相互に持つ特有の問題(日本の歴史認識云々はその端的なものだろう)は欧州のそれと比較してもとくに克服できないようなものではない、として、この三地域がアメリカの凋落と平行して、経済的、政治的、そして軍事的にも単一の地域として統合とブロック化を進めて行くという物語を描いているように見える。このあたりは、日本人として読むと、それはないだろうという気持ちになるけれど、そういう見方をされているということも知っておいた方がいいのだろうな。
とくに目を引いたのが以下の文章。
In both South Korea and Japan, there will be the question of whether they go forward with developing nuclear weapons.ウォルターステインの用語の使い方では、単にKoreaと記した場合は、これは「韓国/北朝鮮」を意味する。(『世界を読み解く2002-3』イマニュエル・ウォルタースタイン/山下範久訳/藤原書店の110頁註)
いうまでもなく、北朝鮮はすでに核兵器の開発に着手しているから、ここではわざわざSouth Koreaと正確に記しているわけだ。
しかし、今回、北朝鮮が核実験に成功して、正式に核保有国の名乗りをあげたら、潜在的には韓国も(近い将来の南北統一によって)核保有国になるわけで、このあたりの微妙な「嬉しさ」が韓国政府のコメントにあらわれているように思うのは考え過ぎか。率直に言って日本の核保有という選択はない。だとすれば、軍事的には核保有国の中国と朝鮮とつきあっていくことになるのだろう。中国は朝鮮半島に核保有国が誕生することをどう感じるのかな。まもなく起こる北朝鮮の崩壊後、中国と韓国が敵対することは日本にとっては有利なことなのか、危険なことなのか。
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