京極杞陽
春風の日本に源氏物語
秋風の日本に平家物語
かつて京極杞陽というホトトギスの俳人がこの二句を並べて発表した。
人をくったような句だが、なるほど、源氏物語には春風、平家物語には秋風だろう。
京極杞陽は明治41年(1908)生まれ、昭和56年逝去。享年73歳。
本名、京極高光。守護職、但馬豊岡藩主京極家の末裔である。
昭和19年、教育招集に応召したときの句。
春風や但馬守は二等兵
これまた、人を食った句である。しかも、入隊、即日除隊である。なにしろ子爵京極家十四代当主である。格好だけの入隊であったのか。戦後、宮内省を退庁、貴族院議員に選出。
しかし、お気楽な殿様人生かと言えば、かならずしもそうとも言えない。十五のときに関東大震災で家屋敷を焼失、両親と兄弟を一度に失った。
俳句は、あくまで飄々、洒脱。ホトトギス一派の懐の深さを感じさせる。
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