『東京奇譚集』村上春樹
村上春樹さんの新作、『東京奇譚集』(新潮社/2005)を読んだ。
温めたフライパンの上をバターが滑っていくように、あんまりすらすら読めるのが問題といえば問題かもしれないなあ。一篇、一篇、ちびちび読まないと、すぐ読み終えちゃうのでもったいない。
(今日はこれ一冊しか持って行かなかったから、通勤の往復で二回読んでしまった。そういう本もわたしには珍しい)
「偶然の旅人」、「ハナレイ・ベイ」、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」、「日々移動する腎臓のかたちをした石」、「品川猿」 の五つの短編が収録されている。最後の作品は書き下ろしだそうだが、残りは文芸誌に発表されたものらしい。月刊の文芸誌はむかしから読んだことがないので(あんなもの誰が買って読むのだろう)、わたしにとっては全部新作でうれしい。どれも素敵なオハナシで、読み終えたあとで、しばらく「ぽわー」と幸せな気分につつまれる。これはなかなかすごいことであります。
本の中身は読んでのお楽しみということで、ここでは書かないが、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」とか「日々移動する腎臓のかたちをした石」なんて題名は、グレイス・ペイリーやレイモンド・カーヴァーの短編小説にあってもおかしくないような気がするな。まあ村上春樹ごのみの題名と言えそうだ。
これに対して、「品川猿」とはいかにもそっけない。で、これはわたしの想像だが、この題名は『新宿鮫』を踏まえていますね、きっと。もちろん内容は全然違うのですが、一点だけ、このオハナシのなかの脇役に警視庁の人でもないのにお巡りさんみたいな若者が出てくるんだな。かれの名前が、桜田くん。ほらね。
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コメント
TBありがとうございます。
『新宿鮫』≒「品川猿」
良いところついていると思います。
村上さんならやりそうですね。
投稿: fuRu | 2005/09/24 23:21
こんばんわ。コメントありがとうございます。
やりそう、やりそう。(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2005/09/24 23:32
ほんと、そういう仕掛け、村上さんならありえますね
そして、そういうの見つけると、ちょっと特した気分ですね♪
投稿: daisuke | 2005/09/26 23:35
こんにちわ。コメント、ありがとうございます。あたっているかどうかはわかりませんが、これも一種の「小確幸」ですね。
投稿: かわうそ亭 | 2005/09/27 08:26
トラックバック有難く存じます。
『新宿鮫』とは、思い至りませんでした。なるほどなるほど。面白いですね。
表ブログのほうのリンクに加えさせて頂きますね。有難うございました。
投稿: higonoshin | 2005/10/30 12:48
こんばんわ。コメントありがとうございます。
友を選ばば書を読みて、とは嬉しいブログの「表札」ですね。わたしの方もリンクさせていただきます。
投稿: かわうそ亭 | 2005/10/30 21:25
はじめまして古木33と申します。検索から辿り着きました。
本筋とはズレている私の感想で申し訳ないんですが、のちほどTBさせていただきますm(__)m
投稿: 古木33 | 2005/11/03 21:31