たった10年で世界は変わる
「ワイアード・マガジン」の編集者であるケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)が"We are the Web"というエッセイを書いている。(ここ)ちょっと長い英文なので、気軽にご一読をとは言えないが、インターネットの前史、そして近未来を考えるうえでなかなかスリリングな内容だ。
インターネットのもっとも核心となるハイパーリンクというアイデアを最初に提唱した人物はバナバー・ブッシュ(Vannevar Bush)*という人物で、1945年のことであった。しかし、実質的にいまのウェブのコンセプトをつくったのはテッド・ネルソン(Ted Nelson)*だろう、とケヴィンはこのエッセイの冒頭で言う。1965年当時のことだったという。
そのテッド・ネルソン(がどういう人物かは【ここ】を参照するとわかりやすい)にケヴィンが会ったのは、カリフォルニアの港町サウサリートの薄暗いドックサイドのバー。折りたたんだ長い紙で膨れ上がったノートをポケットから引っ張り出し、首から紐でぶらさげたボールペンでテッドはかれのアイデアを熱っぽく語った──
いや、なんか古きよき時代だなあ、という感じだが、なんのことはない、これは1984年の話である。しかし、それから10年後にはネットスケープというブラウザーによってウェブが実際に使えるものとなり、最初は、「インターネットはよくて90年代のCBラジオ」なんていうシニカルな評価とは裏腹に、瞬く間に、これなしにはメディアもビジネスも成り立たないような社会的なインフラになっていくのは、これはもうわたしたちの同時代史というものだろう。
ウェブは現代社会にどのように受け入れられたか。最近、ケヴィンはアーミッシュの村を訪ねたという。ハリソン・フォードの映画「刑事ジョン・ブック/目撃者」をご覧になった方は「ああ、あれね」と思い出されるだろう。男は髭を生やし麦藁帽子、女はボンネット、近代以降の文明をかたくなに拒否して、家にはテレビもなく、クルマは用いず馬車で外出する。(そういえば、先日読んだキングの『回想のビュイック8』がアーミッシュの村を管区に含む警察署の話だったな)
ところが、訊ねてきたケヴインに、彼らが「ぼくらのウェブ・サイトではね」と言ったのだそうだ。
「アーミッシュのウェブ・サイトだって?」
「うん、だってほらぼくらだってお店の宣伝はしなきゃならないし」
「まあそうだね、でもさ」
「ああ、ぼくらはね、公共図書館で端末使うんだよ。それとヤフー!」
このあとにケヴインいわく──
I knew then the battle was over.
たった10年で世界は変わる。まったくね。
近未来のオハナシの方も面白いので、明日また書くとしよう。
Ted Nelson photo by matlock on Flickr.
thanks for sharing.
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