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2005/11/18

七色の虹のトイ・ストーリー

むかし流行った歌謡曲に、「七色の虹が消えてしまったの/シャボン玉のような私の涙」というのがあった。歌っていたのはロスプリモス。曲名は「ラブユー東京」であります。わかんない人は、またまたおっさんのナツメロかよと、どうぞお笑い下さい。
ego
この歌にあるようにシャボン玉というのは、その表面に光を受けて虹のような模様をくるくる回し、はかなく消えてゆくもの。17世紀のフランドルの油絵に粘土のパイプでシャボン玉をつくって遊ぶ子供の姿が残っているそうですが、子供のころに誰でも遊んだことがあるにちがいない。日本ではえごの花をつかったともいいますね。えごの花はサポニン(シャボンの語源)を含んでいる。サポニンは界面活性作用がありますから、とうぜんシャボン玉ができるはず。ただし、一度試してみたら、残念ながらうまく行きませんでした。量が足りなかったのかもしれない。

いずれにしても、植物からつくったシャボン玉液は、市販の洗剤やおもちゃのシャボン玉液に比べるとささやかなものであったでしょう。しかし、その液をストローの先につけて膨らませるとふんわり、くるくる回るシャボン玉ができる。そのシャボン玉自体は、400年前のフランドル地方の子供や江戸時代の日本の子供が目にしたものから姿をかえてはいない。

ところが、11年ばかり昔のこと、ミネソタはセント・ポールに26歳の若者がおりまして、おもちゃの発明家の弟子だったのですが、そうだ色のついたシャボン玉があったら面白いじゃんと思いついた。七色の虹がくるくる回る透明なシャボン玉ではない。青やオレンジやピンクの色で鮮やかに輝いているシャボン玉という意味だ。

名前をティム・キーホウ君という。(Tim Kehoe ですが、読み方は違うかもしれない)
なんでだれもこんな単純なことを思いつかなかったんだ。簡単じゃん。やったぜ、これでオイラは大金持ちだ。

ところが、もちろんそんな簡単な話ではない。色素を界面活性剤になじませ、均一にしてシャボン玉の表面にむらなく広げることが第一にむつかしい。やっとのことで、色のついたシャボン玉がつくれるようになって玩具メーカに持ち込んだ。重役会議の席でプレゼンテーション。色のついたシャボン玉がぷかりと浮かぶと役員連中は「おお!」とどよめいた。だが、ぱちんとはじけるとテーブルやカーペットに色が染みついた。「石鹸で洗い落としといてくれよ。まったく。水で洗い落とせるんでなきゃおもちゃにはならんよ、キミ」

しかしまあアイデアはよろしいということで別口の50万ドルの大スポンサーをみつけてさらに実験、実験の繰り返し。ついに水で簡単に落とせるカラフルなシャボン玉が完成だ。
マーケット・リサーチで、お母さん連中と小さな子供たちを試験グループにしてパーティに招待。さまざまな色のシャボン玉に子供たちは歓声をあげる。はじめてこんな光景を見て感動のあまり目を潤ませるお母さんもいる。だが、次の瞬間、シャボン玉がはじけると、子供たちの髪は汚れ、服は色が染みつき、スポンサーが連れて来た犬もどろどろだ。「大丈夫、ぜんぶ水で落とせますから!」というキーホウ君の叫びもむなしく、パーティはドン引け。こりゃあかんわ、とても商品にはならん。

つまり、商品にするには、はじけたとたんに色が消えてしまう魔法のようなシャボン玉でなければとても無理だと、キーホウ君は覚る。だんだん色が薄れるとか、他のものに色が移るとかでは駄目で、一瞬で完全に消えて、最初からそんな色はどこにもなかったとしか思えないようなものが要る。
そんなことは不可能だと、あきらめてしまえば話はおしまいだが、ここからが面白い。なにしろ、資金はたっぷりある。キーホウ君とスポンサーは化学者を雇った。化学者の名前はラム・サビニス(Ram Sabinis)、ボンベイで化学の博士号をとり、いくつかの特許を持っている。

「はじけた途端に色が消えるシャボン玉はどうやったら出来るかって?うん、ええと、たぶんラクトンならイケルかも」と博士。
「ラクトンって何、それ?」とキーホウ君。なにしろかれは町の発明家で、化学の専門知識はないのだ。

Wikipediaによれば、「ラクトン (Lactone) は、分子の環の一部としてエステル結合を持つ化合物を指す」。
といっても、なんのことか、よくわからないが、このラクトン構造を応用すると、シャボン玉ができているときは一つの色の可視光線しか通さず、シャボン玉がはじけると、分子構造が変わって、すべての可視光線を通すので透明になる、といったことらしい。(このあたりはかなりいいかげん(笑))
zubble_b
こうして苦節11年、ついに消える色つきシャボン玉は完成し、このたびめでたく商品化されたそうです。商品名は「Zubble」。トイザラスはクリスマス商戦に投入したいと言ったとか。
50万ドルの投資の元は取れるのかな。
以上は、アメリカの科学雑誌「ポピュラー・サイエンス」の最新号のwebの記事からのご紹介でした。おもしろい記事でしたので、興味のある方はどうぞ。ちょっと長いけどね。【ここ】
なんでも、この発明をこの雑誌は今年の大賞に選んだそうです。

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