耐震詐欺事件の解明を望む
青木玉さんの『底のない袋』(講談社/2004)を読んでいたら、こんな一節が。
むかしの人は夜、寝しなに、10年前の震災のとき、わたしのところは震度4にすぎなかったが(*)、それでもマンションの中にいて、これはやばいかも、と一瞬思った。単純に縦や横に揺れるのではない。マッチ箱をイメージして、それぞれの柱の対角線がねじれるように揺れるのだ。ミシミシという不気味な音をたてながら。あのときほど鉄筋コンクリート造の建築物に柱があるということを意識したことはなかった。むかしの人ではないが、頼むぞ柱、なんとか持ちこたえてくれ、と祈った。
「寝るぞ根太、頼むぞ垂木、梁、柱、なにごと有れば起こせ屋の棟」
と家中の要所要所に我が身を守れと言葉をかけて横になる慣わしを持つ人があったそうだ。
今回の耐震強度偽装事件は「頼むぞ垂木、梁、柱」というごくふつうの人々の日々の祈りを踏みにじり、嘲りながら、利益だけを追求したということで、平成ニッポンの代表的な風景となったようにわたしには思える。この時代の日本人の顔はあの総合経営研究所の内河健なる男によって代表されることになるだろう。品性もなく、公共心もなく、下劣で、醜い、金儲けの達人のかれら、「勝ち組ニッポン人」。
(註*)
その後いまにいたるまで、地震のたびにテレビを見ると地図の上に震度4の表示があることは何度かあったが、あれほど激しい揺れではない。震度はあまりあてにならないと思う。
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