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2005/12/11

諜報機関の甘い罠

冷戦華やかなりしころ、西であれ東であれ、政府の高官や政治家が売国奴になったり外国のスパイの手先になりさがる動機は、その人物のイデオロギーや信念によるという高尚なものもあれば、自分を冷遇した組織や国家への復讐という人間くさいものもあった。情けないことながら、カネや贅沢な生活にあこがれてなんて卑しい動機も少なくはなかった。しかし、もっともありふれた転落の始まりは──

『世界を騒がせたスパイたち(上・下)』N.ブランデル,R.ボア/野中千恵子訳(現代教養文庫/1990)には、ずばり「セックス」という独立した一章がある。

あなたのセックスの夢が、ある日、叶えられる。

堅物の役人には、なぜか自分好みの顔立、服装の若い女が、どうぞあなたの好きにして、と耳元で囁く。
変態の政治家には倒錯プレイを提供してくれる夢のような美女が現れる。
誰にも告げたことのないホモ趣味に悩む公安担当者には、アドニスのような少年が保護を求めてアパートに飛び込んでくる。
なんてツイているんだろう、こんなことがわたしの人生におこるなんて、と幸運を神に感謝したのもつかのま、数日後、あなたのもとに謎の訪問者がやってくる。
大型のマニラ封筒を差し出され、なかをあらためると、あなたの顔がはっきり写った、人にはとても見せることができない写真。真っ青になったあなたに謎の訪問者が告げる。
じつはちょっとしたアルバイトをお願いしたのです。なに、あなたのデスクに回ってくる政府部内の書類をちょっとコピーしてくれればいいんです。まさか嫌とはおっしゃらないと存じますが・・・・。

スパイという稼業は人類最古の職業と同じくらい古い歴史を有しているそうだから、冷戦が終わっても、いまもどこかで同じことは行なわれているだろう。

しかし、この手がきかなかった大物政治家もいた。上記の本に紹介されている一昔まえの話。日本の政治家やお役人も、某国の罠に落ちたときはぜひこの手で対応していただきたいが、無理だろうなあ。
この大物、モスクワを訪ねたときに、ソビエト側の罠にかかり、ホテルのスイートに送り込まれた数人の美女との交歓シーンをフィルムに撮られてしまったというのですね。やれやれ。しかし、KGBの係官がこのフィルムを見せて脅しにかかろうとしたら、驚いたことにこの人物、国に持ち帰ってみんなに見せたいから、ぜひフィルムのコピーをくれと言い出した。そして「わが国民はきっと私を誇りに思うだろう」と付け加えたのだそうであります。
さすがのKGBも、こいつのスパイ採用はあきらめたとか。

誰あろう、インドネシア初代大統領スカルノ閣下であったそうな。

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コメント

まったく男と言うものは!(笑)
まあ、スカルノさんも、美女数人を相手だから大きな態度で出たけど、チャ●ル●プレイだったらどうだったのか・・・・って、私は何を考えてるんでしょうね~(笑)

投稿: なぎ | 2005/12/13 00:37

まったく男というものは!
どうもすみません。って、わたしが謝ってどうする。(笑)

でも、政府機関やら機密に関わる職場のタイピスト(ってのは今はもういないだろうけど)や秘書などの女性にも、諜報機関は罠を仕掛けるみたいですよ。この場合は、男性のような美人局方式ではなくて、ハーレクインロマンスも裸足で逃げ出すようなロマンチックな出会いと求愛があり、もうこのヒトなしでは生きていけない、と燃え上がったところで、そのレット.バトラーだか、ヨンさまだか、木村拓哉だかしらないけど、そういう男が、仕事を持ちかけるというのがお約束らしいです。
どうぞ、ご用心のほど。(笑)

投稿: かわうそ亭 | 2005/12/13 08:32

スカルノの話は有名ですね。この話には若干の落ちがあって、彼の娘と結婚した男(確か何かの技師をしていたはず)がこれまたモスクワで同じ経験をしたが、彼の方は義父ほど度胸がなかったか、大統領の娘が怖かったか、とにかくKGBの脅迫に屈してスパイになったそうです。そういえばどこかの元総理も中国の公安関係の女性と何かあったとかなかったとかで、一時問題にされたが、彼は中国のエージェントになったのでしょうか?この手の話は裏がありすぎて、本当のとこは霧の中ですね。

投稿: 野口雅昭 | 2005/12/15 15:57

こんばんわ。へえ、そういう話もあるんですか。スカルノに娘が何人いたかは知りませんが、長女は第5代大統領のメガワティさんですよね。この人の旦那の話だったら、ちょっと説得力があるかも。(笑)
某国の位人臣を極めたポマードの噂については、命が惜しいのでノーコメント。

投稿: かわうそ亭 | 2005/12/15 21:13

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