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2005/12/08

プロテイン・イズモ

以前、イモリの生殖フェロモンの名前が万葉集に由来するという話を紹介した。(「イモリは見ずや君が袖振る」)今回も、それにやや似たようなオハナシだが、ことが人間にかかわることだからあまりお気楽に終始できるかどうかはわからない。

雑誌『生物の科学 遺伝』の11月号を新しくできた奈良県立図書情報館(これはたいへんよい施設)でぱらぱら眺めていたら、こんな短いコラムが目に止まった。
動物の受精メカニズムで長い間謎だった精子側の因子が、このほど日本の研究チームによって突き止められた。この因子であるタンパク質は縁結びの出雲大社にかけて「Izumo」と名づけられた。研究チームは『Nature』に発表、とある。
ほんとかね、と念のため『Nature』のバックナンバーをあたってみたら、ちゃんとありましたね。(10. March 2005/ No.7030)

なんでも、このタンパク質は精子と卵子が結合した後の受精の最終段階であるところの融合メカニズムを制御するらしい。せっかく卵子に辿り着いた精子も、このタンパク質を生成できないと最終的に生殖に失敗するわけだ。細胞レベルでの縁結びを最後に可能にする因子だということで、イズモという命名になったのでしょう。縁結びと子授けとは、神様の方の業務分担が違うような気もするが、まあいいか。

これが実用化できればふたつの使い道がありますね。
ひとつはイズモを促進させて不妊治療に用いること。
もうひとつは逆にイズモを遮断するかたちの新しい避妊方法。

しかし避妊に使うとなると、精子は苛酷な競争をくぐりぬけて卵子に巡り合い、結合を果たし、いざ融合しようとしたところで失敗するわけですよね。最後の最後で騙まし討ちみたいな感じでどうも寝覚めがよくないような。(笑)

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コメント

ニホンイモリ(Cynops pyrrhogaster)の性フェロモンsodefrinとは別にシリケンイモリ(C.enslcauda)からはシリフリン(silefrin)というフェロモンが分離されています。「袖振り」ならず「尻振り」かと思いきや、最初のアミノ酸配列がS-I-L(セリン-イソロイシン-ロイシン)だからであります。

投稿: 烏有亭 | 2005/12/09 22:14

ソデフリンにシリフリン。お、おもしろすぎます。(笑)

投稿: かわうそ亭 | 2005/12/09 23:09

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