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2006/01/05

大正の詩人の風景(その2)

きのうの続きのノート。『昭和詩史 運命共同体を読む』大岡信(思潮社/2005)より。

■詩壇のテロリスト
ダダイズムのもつエネルギーをより社会化するかたちで、既成の価値観に対する急進的、破壊的な反逆の叫びとしての詩運動を起こしたのは、大正12年12月創刊の同人誌「赤と黒」に拠った詩人たち。メンバーは、坪井繁治、岡本潤、萩原恭次郎、川崎長太郎、小野十三郎。創刊号の資金を出したのは有島武郎。
坪井らが有島邸を訪ねると、きたないなりをした彼らを立派な応接室に通し、五十円とバーナード・リーチのエッチングを一枚くれた。かれらは有島に紹介状を書いてもらって柳宗悦のところへ赴き、リーチの絵を二十五円で売りつけた。有島武郎の自死はそれからひと月ほどした頃だった。大岡さんのコメント——「このエピソードは、ある時代の断面をあざやかに示しているが、『赤と黒』という題名そのものも、時代を敏感に反映していた。」
「赤と黒」創刊号の表紙に刷り込まれた宣言。「詩とは?詩人とは?我々は過去の一切の概念を放棄して、大胆に宣言する!『詩とは爆弾である!詩人とは牢獄の固き壁と扉とに爆弾を投ずる黒き犯人である!』」

■うわさの南天堂
「赤と黒」が大正13年6月に廃刊されると、これを受け継ぐように刊行されたのが村山知義を中心にした「マヴォ」。
また同年にダダ、アナーキストの詩人を集めた雑誌「ダムダム」が創刊された。萩原恭次郎、岡本潤、小野十三郎、坪井繁治、高橋新吉、中野秀人、野村吉哉、橋爪健たちがここに拠った。この「ダムダム」の発売所は南天堂書店。経営者は松岡虎王麿という。
南天堂書店の二階はレストランになっていた。大岡さんの文章を引く——「『ダムダム』同人をはじめダダイスト、アナーキストの溜まり場になっており、夜はきまって常連の間で喧嘩があり、派手な乱闘もあった。平林たい子、林芙美子、友谷静栄といった女流も常連だったという。学生だった高見順も、ダダイスト気取りで時おり南天堂の階段を昇ったと、『昭和文学盛衰史』の中で語っている。」

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コメント

あけましておめでとうございます。
昨年は時々おじゃまさせてもらい、楽しませていただきました。
今年は少し北原白秋のこと調べてみたいと思い、三木卓さんの『北原白秋』、飯島耕一の『白秋と茂吉』を購入しました。
今年も時々寄らせていただきたいと思います。
よろしくお願いします。

投稿: MARU | 2006/01/05 19:38

今年もよろしくお願いいたします。
MARUさんのブログでシューベルトの記事を拝見しましたが、たまたま「憂愁書架」さんの『フランツ・シュウベルト』グロウウ゛(岩波文庫)の書評で興味をかき立てられたばかりでしたので、なんだかこういう一種のシンクロニシティみたいなのがあるのかなあ、なんてちょっとびっくり。
そういえば、大正期の詩人にお互いに関心というのも偶然ながら面白いですね。
憂愁書架さんのシューベルトの記事はこちら↓
http://saiki.cocolog-nifty.com/shoka/2005/12/post_1d3f.html

投稿: かわうそ亭 | 2006/01/05 23:12

シンクロニシティという考え方は僕も以前から興味を持っています。
「偶然」の根底には「必然」がある・・・と考えると、なんだかワクワクするように思えます。
「老子」の思想にも、「すべてはつながっている」という意味で、ユングのこの思想に近いものを感じています。

投稿: MARU | 2006/01/11 12:46

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