トロンハイムの運河を行けば
今年の歌会始のご様子が夕刊に出ていた。
今年の御題は「笑み」だとか。
御製 トロンハイムの運河を行けば家々の窓より人ら笑みて手を振る
歌会始の御製でこのように外国の地名が詠まれるというのは、めずらしいことのような気がして、ざっと調べてみた。管見の及ぶところでは、昭和天皇の歌会始の御製に二首ある。
昭和三十六年一月十二日(御題 若)
御製 旧き都ローマにきそふ若人を那須のゆふべにはるかに思ふ
昭和四十七年一月十四日(御題 山)
御製 ヨーロッパの空はろばろととびにけりアルプスの峰は雲の上に見て
もちろんローマはオリンピック大会(昭和三十五年)だから、ローマそのものを詠まれたとは言えない。
今上にも海外旅行を詠まれた歌会始がある。しかし、外国の地名は使われていない。
平成五年一月十四日(御題 空)
御製 外国の旅より帰る日の本の空赤くして富士の峯立つ
五月に訪問なさったトロンハイム( Trondheim)というノルウェイの町の思い出がよほど素敵なものであったのだろうと、ほのぼのするな。
さっそくFlickrでトロンハイムの写真を公開(Creative Commons. Some rights reserved.)している人を捜してみた。こんな、運河の町のようです。クリックして大きな写真でぜひご覧ください。
photo by AdamLogan.thank you for sharing.
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コメント
今年もよろしくお願いします。
歌会始は後世に残したい日本的な行事で、いつも関心をもって見ています。
それにしても一般の詠進歌と天皇以下皇族の歌との違いが面白い。
一般詠進歌では
われ笑めば母も笑まひぬおほかたの過ぎ来し日々は忘じたまふに
は近代短歌正統の、とても感動的な歌ですし、
電話鳴り出るたび笑みがこぼれだす未だ言ひ慣れないあなたの苗字
などは俵万智風で若い人らしい、それこそ微笑ましい歌です。
それに較べて天皇の歌は決して面白いものではない。
どなたかが昭和天皇の頃、「あれだけつまらない歌を堂々と歌えるのは、現代では天皇しかいない」と言っていましたが、短歌の意味が皇族方と下々では全く違うのでしょうね。一種の「言霊」で、それについて触れることにのみ意味があるのでしょう。
戦前の歌会始はお歌所風に、「松の雪」などという御題が普通であったようですが、戦後は「近代短歌」が選者を占めるようになって、御題からしてがらりとかわってしまったようです。それでも天皇は江戸時代(?)からの作風を踏襲されているのは、立派なことと言えるのではないでしょうか。
我善坊
投稿: 我善坊 | 2006/01/13 10:53
まったく、おっしゃるとおりだと思います。
舒明天皇の国見の歌にしても、豊穣や安全が人知では図りがたいものであるからこそ、「うまし国ぞ蜻蛉島大和の国は」と歌われたのではないでしょうか。
やはり天皇の歌というのは、「言霊」としてふれることが正しく、そこに歌の出来不出来を見るべきではないと思います。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
投稿: かわうそ亭 | 2006/01/13 21:34
この日の新聞はざっとしか目を通せず、両陛下の御歌のみ読みました。トロンハイムという地名が詠まれていることがほんとうに印象的でしたので、このように、おもいのほか美しい画像のご紹介があり、拝見できありがたくおもいました。
いつもは、皇后さまの御歌のほうが、心に残るのですが、今回は逆でした。
「言霊」としてふれること、なるほど・・今まで気づきませんでした。ありがとうございました。
投稿: ミラー | 2006/01/15 23:42
この運河の両側の建物の、窓という窓から、人々が鈴なりになって、両陛下に手をふる光景を思い浮かべると、ノルウェイという国に親愛の気持ちがわいてきますね。
トロンハイムという新しい歌枕。(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2006/01/16 23:08
This is my photo, thanks for using it. Is it possible to have the test above in English so I can read what the article is about?
投稿: Adam | 2007/07/23 14:55
Hello, Adam
It is generous of you to share this beautiful photograph.
In this article above I wrote about the annual New Year Imperial Poetry Reading.
From ancient days Japanese court have had this ceremonial meeting.
It is interesting that in this Poetry Reading, not only the most famous and respected poets but also ordinary people are invited to read their poems.
(Actually there is a person in charge who read all poems with a loud voice.)
And as a matter of course all the imperial family member have to make their own poems.
In 2006 His Majesty exhibited his poem. It was about the memories of trip to Norway. He and his wife officially visited there in previous summer.
He thought back fondy on the run of Trondheim. People waved their hands to them.
That spectacle deeply impressed him.
That is what my article roughly say and as I didin't know then ' Trondheim' I looked up through Flickr and came across your wonderful photograph.
Thank you!
投稿: otter(かわうそ亭) | 2007/07/23 22:37