村越化石
「俳句研究」3月号でもうひとつわたしの目を引いたのは、村越化石さんの「大年」二十句である。とりあえず五句ほどを抜いてみる。
一位の実ふふみて深空仰ぎみよ 村越化石
世の端のその端に住み柿吊す
日溜りへ落葉も吹かれきて溜る
冬ごもり見えざるものを見て暮らす
日脚やや伸びしを居間の畳知る
なぜ目を引いたのかといえば、たいへん申し訳のないことながら、この俳人がご健在であるとは思っていなかったからである。俳句雑誌はあまり熱心に読むほうではないので、おそらく、この間もずっと俳誌に作品を発表しておられたのだろうが、わたしはいままで気がつかなかった。
この俳人のことを知ったのは昨年。たしか岸本尚樹さんの本からだったように思う。
「俳句研究」に発表された二十句の冒頭はこのようなそっけないものだ。
「大年」 村越化石 (「濱」同人)
俳句という詩を味わうには、ただ俳句だけがあればよろしいというのは正論である。
たとえ作者不詳でも名句というのはありえるだろう。もしそうではないというなら、俳句第二芸術論を蒸し返される。たしかに作者の境涯を知らなければ俳句は鑑賞できないというものではないし、あまり過剰にそこに鑑賞の焦点を置くのはよいことではないとわたしも思う。
しかし、この村越さんという方は、やはりその境涯を知っているのと知らないのとでは、俳句の味わい方が大きく変わるように思う。
――ということで、出すぎた真似なのだが、俳句辞典から村越さんの項目を簡単に転記しておく。以下の略歴とリンク先の記事を読んで、もう一度、上の句に戻ってみてほしい。
村越化石(むらこし・かせき)
大正11年(1922)静岡県生まれ
昭和16年(1941)栗生楽泉園に入園
昭和24年(1949)大野林火に師事
「濱」同人
昭和33年(1958)第4回角川俳句賞
昭和45年(1970)失明
昭和49年(1974)第14回俳人協会賞
昭和57年(1982)第17回蛇笏賞
3年ほど前のもののようだが、こちらの記事がわかりやすい。【ここ】
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コメント
読みました。村越化石と言う名前は良く聞くのですが、その内実を少しは知る事が出来ました。
投稿: しかせ | 2012/04/23 18:47
こんにちわ。コメントありがとうございます。参照先のリンクが消滅してしまっているみたいですね。申し訳ない。
投稿: かわうそ亭 | 2012/04/23 19:25