地獄で握手(1)
オリバー大佐(ニック・ノルティ)のモデルとなったカナダの退役軍人ロメオ・ダレール中将は2003年に『Shake Hands with the Devil』という本を書いている。100日間で80万人(100万人とも)が虐殺されたルワンダのジェノサイドを目の当たりにした国連PKO部隊の指揮官の手記である。
カナダの2004年度のGovernor General's Literary Awardのノンフィクション部門賞を受賞した。(Governor Generalはカナダ総督。カナダの国家元首であるイギリスのエリザベス女王の名代として任命される事実上の国家元首。詳しくは【こちら】)
読んでもいない本のことを書くのは主義に反するが、2003年の秋に4日間をかけて行われた、この本の内容をめぐってのインタビューがあるので、このインタビューの方をプリントアウトして一通り読んでみた。ルワンダ内戦や国連の平和維持活動についての専門的な知識はわたしにはないので、きちんと理解できたかどうか心もとないところもある。しかし、ロメオ・ダレールの語る言葉は、客観的な深い洞察と、人間としての生々しい憤怒があり、心を打つものだった。
かなり長い英文記事なので、どこかに翻訳があればいいのだが、いまのところみつけていない。インタビューのタイトルは"Ghosts of Rwanda"という。【ここ】
内容を要約するのは手に余るので、印象的な話だけを二、三回に分けて紹介する。
その一。
インタビューの後半にホテル・ミル・コリンのことが出てくる。(ただし、映画の主人公となったポール・ルセサバギナ氏についての言及はこの記事の中にはない)発言はミル・コリンにいた白人ビジネスマン家族の脱出の情景。こんな内容だ。(逐語的なきちんとした訳ではないので念のため)
「何年も子供を育ててくれた乳母を置き去りにして、バッグに衣類(本当は違う)をパンパンに詰め込んで、あまつさえ犬を連れて飛行機に乗りこむ——これは規則違反だ。しょうもないくずみたいなものは後生大事に抱えて、何年も忠実に仕えてきてくれた人々は見捨てるんだ」
映画でもたしか、空港に向かう脱出用のバスの窓に犬が見えたように思う。映画のマーケットはバスに乗る側の人々だからだろうか、映画ではそこに非難のニュアンスはあまり感じなかった。白人たちは良心の呵責と恥ずかしい気持ちでうつむいているという演出だった。
そうする以外に方法はなかったわけで、そこまで言うのは酷な気もする。愛犬を捨てることで自分の良心を証することにはならないからなあ。しかし、言っていることはわかる。
(この項つづく)
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コメント
私もこの映画見ました。
ミル・コリンにいた白人ビジネスマン家族の脱出の情景は、印象的なシーンでした。ああ犬も乗っている…と思いました。
彼らは無傷で帰国できるんだ。。と見ているとき思いましたが、考えてみるとそれが国が守ってくれるということだし、われわれもそういう状況にあったらそれをまず期待しますよね。
その後、さまざまなコネクションで現地人の中から特定の人が選ばれて脱出用の車に乗るシーンも印象的でした。
これについては、上記のインタビューでもロメオ・ダレールがふれていましたね。
インタビューは、印刷すると34枚ありました。
ちょっと私には難しくすいすいとは読めませんでした。
他の人のインタビューなども本当はすいすい読めると良いなぁ…と思いながら、疲れたのでよんでいません。
こういうのがどんどん読めると本当にいいなぁと思います。
ホテルルワンダに関するこの記事は続きを楽しみに待っていてしっかり読ませていただきました。いつもありがとうございます。
投稿: mimo | 2006/03/12 18:51
わたしのプリンターでは全部で25枚でした。このインタビュー、ざっと斜め読みする分には、そんなに難しくないみたいに思えるんですが、きちんと読もうとすると、よくわからないところだらけになってしまいますね。たぶん、あちこち勘違いしていると思います。試訳の部分、あまり大きな間違いをしてなければいいのですが。
投稿: かわうそ亭 | 2006/03/12 22:10