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2006/05/04

エルキンズ『骨の島』

休日の昼間、一人でカウチに寝そべって上質の本格ミステリを読むのはわたし大好きな息抜きのひとつである。本があまり面白くなければそのまま昼寝にすればいいし、面白ければ誰にも邪魔されず読み通すことができる。 アーロン・エルキンズの『骨の島』は、途中でうたた寝もしたけれど、どちらかと言えば後者の面白本のくちで、楽しい午後を過ごすことができた。
本書はスケルトン探偵ものの11作目だそうで、今回の舞台はイタリア北部の湖水地方。
例によってギデオン・オリヴァーとジュリーは旅を満喫しているが、今回はとくにレストランの食べ物が美味しそうで、読みながら生唾がわいてくるのでありました。

「“リゾット・アッラ・モンツェーゼ”がお薦めですよ!」アンジェラはギデオンの背中に向かって叫んだ。
ジュリーはレストランの奥のテーブルで夕食をぱくつくのに余念がなかった。暗色の木を使った内装と低いアーチ型の天井が落ち着いた雰囲気をかもし出す、静かなレストランだ。
「ごめんなさい」ジュリーは料理を頬張ったまま言った。「おなかがすいてすいて、待っていられなかったの。一番目のお皿(プリモ・ピアット)が来たところで、次はミラノ風カツレツを頼んだわ」
「無理ないよ」と言うギデオンの口には、もう唾がたまっている。二人とも昼食と夕食の両方を食べそこなっていたから、レストランの焼き肉と樽入りワインの芳醇な匂いにギデオンの膝は震えそうだった。「それ、おいしそうだね。何だい」
「アンジェラお薦めのリゾットよ。もう頬っぺたが落ちそう。ソーセージとトマトと、それにマルサラ——」

まいるなあ。(笑)
2006_0504
ところでミステリーは大好きなのだが、えてしてこうした読み物は複雑な家族関係がテーマになっていたりする。本書の原題は『Good Blood』という。イタリアの伯爵家の血統をめぐるお話で、血族、姻族、養子、後妻の連れ子などが次々に出てくるし、そもそもプロローグでは、どうしても男子の跡取りが欲しい伯爵が、自分の姪に体外受精の自分の子供を産ませそれを自分たち夫婦の子供として育てるという奇怪な(しかしあり得なくもなさそうな)設定が語られるのである。
正直、こういう複雑な親族関係を混乱せずに理解するというのは、わたしはお手上げである。
途中で、誰と誰がどういう血縁関係にあるのか(またはないのか)を説明する箇所が何回もでてくるのは、さすがに作者も読者サービスが必要と思っているからだろう。何回目かに、ついにあきらめてわたしはこの一族の家系図をノートにつくった。やれやれ。
本書によれば、こういう親族関係の理解は人類学者の基本中の基本らしい。

「・・・・僕のいとこに当たる。いや、ちょっと待ってくれ。彼は母のいとこか。するとどういうことになるのかな。僕の叔父になるのかな。でも年は同じなんだよ」
「君のまたいとこさ」ギデオンが首を振りながら、言った。「それにしても君はどういう人類学者なんだ。親族関係について勉強しなかったのか」
フィルは肩をすくめた。「したさ。オーストラリア・アボリジニーの一族アルンタ族の外・夫方居住親族構造なら、完璧に理解しているよ。ところが自分の親族構造となるとどうしても呑み込めないんだな。ややこしすぎる・・・・」

まったくわたしが源氏物語を読む気になれないのも、わたしがこういう弱点をもっていることを自覚しているからなのである。(嘘)

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