かもめ食堂
「きらいなことをやらないできただけですから」
正確な台詞は覚えていないのだが、主人公のサチエ(小林聡美)が、あなたは好きなことができてうらやましいと言われて、こんな感じのことを言う。
うん、そうだな。たしかに、そうすればよかったのかも知れないな。
映画を見終えたあと、ちょっとだけ心が痛んだ。サラリーマンとしてきらいなことばかりやって生きてきたなあ、という悔恨と哀惜・・・まあ、たまには自己憐憫に浸ることもありますわな。(笑)
はじめからきらいなことはやらないと言ってしまってはそれまで。
やってみて、きらいだとわかることもある。
好きとかきらいとかいう以前に、やらなければ仕方がないことだってある。
きらいだと思っていたことが、あとから自分の肥やしになったり、生きがいになったりすることもある。
それでも、どこかある時点で、わたしはもうきらいなことはやらないと宣言して、生きていきたい気持ちはよくわかる。
この映画でたぶん一番存在感を示しているのが、マサコ(もたいまさこ)だとわたしは思ったけれど、彼女のにっこり笑う表情のなかには、ちまちました自分の損得だけにこだわる貧しさがない。それはたぶん、自分の得にならないことはうまくこれを回避して自己利益の最大化をはかることが賢い生き方である、というような生き方を選ぶことが、わたしの「きらいなこと」だというメッセージをわたしたちが受け取るからではないかと、思う。
うまく言えないのだが、映画をご覧になった方は、おそらくわかってくださるのではないかと思う。
以上、雑駁ながら「かもめ食堂」の感想です。
あ、そうそう、この映画見ると、おいしいコーヒーが飲みたくなりますね。
| 固定リンク
「h)映画・テレビ」カテゴリの記事
- ぞけさって誰よ(2014.10.05)
- キュートな「タイピスト」(2014.05.20)
- 大統領の料理人(2014.05.10)
- 花子とアンのこと(2014.04.15)
- カーネーション(2012.03.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
かわうそさま
この映画を私も見たいと思いました。
http://www.fjmovie.com/main/movie/2006/ruokalalokki.html
あなたのエッセイに導かれて、私もかつてフィンランドのことを綴った拙稿を思い出しました。いい国ですねえ。
「ムーミンママ」 フィンランドのタルヤ・ハロネン大統領
http://www.janjan.jp/world/0511/0511145100/1.php
投稿: 椿 わびすけ | 2006/05/10 12:04
僕もこの映画を観たいと思っていたのですが、GW帰省したときに「レント」の方を観てしまい、見逃してしまいました。
(「レント」もなかなか良かったですが・・・)
しかし、「きらいなことをやらない」という言葉沁みますね。
投稿: maru | 2006/05/10 20:59
椿 わびすけ さま
ハロネン大統領とフィンランドの記事、たいへん興味深く拝読いたしました。
映画「かもめ食堂」のなかに、この国の人はなんで、こんなに、こせこせしていなくて、豊かに見えるんだろうという日本人の疑問に対して、だってフィンランドには森があるものと若者が答えるシーンがありました。
どこを歩いても、空のペットボトルがきたなく散乱している近郊の森を思ってすこし悲しくなりました。
投稿: かわうそ亭 | 2006/05/10 21:00
maru さま
どうもです。エントリーの方にはあえて書きませんでしたが、たぶんこの映画は、年代より性別で評価が大きく分かれるような気がしました。かつては(いまでも?)男にとっては、「きらいなことをやらない」ということは、歯を食いしばっても言ってはならないことであったわけで、この映画を見るのはすこしつらいものがありました。たぶん女性は、もっとストレートに共感できるのじゃないかなと思いましたけれど。
投稿: かわうそ亭 | 2006/05/10 21:10