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2006/07/19

フェイス・ブラインドネス

「皇帝ペンギン」や「wataridori」といった動物の記録映画を見ていて、不思議に思うのは、繁殖地で孵化したヒナのところに親鳥が餌を運ぶときに、何千、何万というヒナのなかから自分の子供をきちんと見分けているらしいことですね。間違って他所の子に餌をやったりはしない。
あれだけたくさんのヒナの中から、どうやって自分の子供を識別するのだろう。

「ペンギンのQ&A」というサイト(ここ)によれば、

ペンギンは、孵化の二,三日前から卵に穴があいて、中からヒナの鳴き声が聞こえますが、親はそれ以前から卵に向かって鳴きかけています。親子は孵化前後三,四日の間に、お互いの鳴き声を覚えると考えられています。

ということなので、どうもお互いの鳴き声で、親子の識別をしているらしい。

なるほど、それならわかるな。だってペンギンなんて見た目は全部同じだもの、と思っていたのだが、はたしてそうだろうか。たしかにペンギンの群れや海鳥の群れを映像で見ると、ぼくらの目には全部がまったく同じに見える。一羽、一羽の識別を視覚的におこなうことは絶対にできそうにない。しかし、だからといって、かれらも視覚的な個体識別ができないと決めてかかるのは早計かも知れない。

ニューヨークタイムズの7月18日版のサイエンス・セクションを読んでいたら、人の顔の識別ができないという症例の記事が出ていた。
正式には prosopagnosia というらしい。一般には face blindness 。
日本語ではどういうのだろうと検索したら、「ライフサイエンス辞書プロジェクト」というサイト(ちなみにここの英語教材はなかなかおもしろい)に「 (病名)顔貌失認, 相貌失認」と出ていました。

2006_0719このニューヨークタイムズの記事によれば、顔貌失認という病気は卒中などによる脳損傷の結果というのはまれで、多くは先天性もしくは発生上の障害であるというのですね。しかも従来考えられていたよりかなり広範にみられる病気なんだそうです。無作為に抽出した689人の学生を調査した結果2.47%がこれに該当した。
この病気の人は、たとえば本なら普通に筋を追うことができるのだけれど、映画やテレビだと、出て来る人が全部同じに見えてなにがどうなっているのかわからなくなっちゃうんだって。
たぶん、この病気のひとにとっては、ぼくらがペンギンの顔の違いがわからないような感じで人間の顔の違いがわからないんだろうと思う。
ただ、こういう病気の人は、相手の髪型だとか、声だとか、服装だとか、仕草などでその人が誰であるかを覚えるような「代償」を自然に身につけるので、大半の場合は社会生活にそれほど大きな支障はないようです。まあ、だからこれまではっきり「病気」だとは思われていなかったわけもそのへんにある。

最近の若いタレントは全部一緒に見える、と悪態をついているあなたも、もしかしたらこれかもしれませんよ。(笑)

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コメント

お顔も声も知らない、かわうそ亭様へ
12日ぶりの記事。これまでの最長インターヴァルではないでしょうか。ご病気かと、少し心配しました。

投稿: Wako | 2006/07/19 20:23

こんばんわ。
どうもご心配をおかけいたしました。
いたって元気ではあるのですが、この間、あんまり本も読まず、書くに足るほどのことがなかったので、お休みをしておりました。

投稿: かわうそ亭 | 2006/07/19 22:36

髪の毛、仕草、服装、声、、、、
最近のタレントがみな一緒に見える、、、、
ひょっとして私、、、、
コレ以上も増える変な予感、、、

投稿: でんでん虫 | 2006/07/20 01:24

ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。
どうもわたしもコレじゃないかという自覚ありでございます。(笑)

投稿: かわうそ亭 | 2006/07/20 21:54

 かわうそ亭さんこんばんは。
いやー、私も人の顔って区別つかないんですよ〜。特に写真とかダメですね。あと長いこと会ってない人もヤバイです。今まで自分がバカなせいだと思ってましたが、病気だったんですね!ちょっとホッとしました…ってホッとしていいのでしょうか?
NHKBSで「芸術のわな」っていう英BBCが作ったドキュメンタリー見たのですが、ある鳥のひなは、親のくちばしの2本線に反応して口を開けるんですって。実験で木の棒に2本線を引いてひなに近づけたら、パカっと口をあけてました。古代の土偶は体の一部を強調してますが(例えば女性の胸など)、動物の脳は体の部分に反応して見分けているらしいです。面白いですよね。

投稿: ぎんこ | 2006/07/22 23:09

へえ、そのドキュメンタリー、面白そう。見のがしたなあ。BBCってとてもいい番組作りますよね。
ところで、私の場合、冗談抜きに言えば、顔の区別はきちんとつくんですが、その顔と名前がつながらない——というか名前が思い出せないことが増えてきて、職業上、これはちょっとまずいなあ、なんて思っているのであります。
まあ、その人になんらかの関心をもてば、自然に名前は覚える筈なんで、ということは、人間一般に興味関心が年々薄れているということなわけで・・・・あーあ。(笑)

投稿: かわうそ亭 | 2006/07/22 23:28

かわうそ亭さん、こんばんは。
その番組は「BS世界のドキュメンタリー」という番組内で放送されてました。NHKBSが視聴可能ならおすすめですよ。
http://www.nhk.or.jp/bs/wdoc/wdoc.html

投稿: ぎんこ | 2006/07/24 21:53

ぎんこさん あ、どうも情報ありがとうございます。こうして見ると面白そうな番組が多いですね。

投稿: かわうそ亭 | 2006/07/24 22:58

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