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2006/08/23

掃苔録補遺

霊山護国神社の入江杉蔵の墓の続き。
前の記事で、松下村塾四天王の三人が一緒に祭られている場所があることを書いた。久坂玄瑞、高杉晋作、入江杉蔵である。別に「四天王」が揃う必要はないのだろうが、なんで吉田稔麿はここにいないのだろう、とふと疑問に思った。
なんか変である。
こういうときは、視点を変えた方がよい。そもそも、この場所はどういう人を祀ったところであるのか。

入江、久坂、高杉はわかるが、ほかの志士は知らない。
前の記事の写真をクリックしていただくと、拡大されるので名前が読み取れるかもしれない。一応、ここにその名前を挙げてみよう。左から——

 有吉熊次郎良明
 入江九市弘毅
 寺島忠三郎昌明
 久坂義助通武
 來島又兵衛政久
 高杉晋作源暢夫

こういうときにインターネットというのは実にその威力を発揮しますね。検索すると、たちどころに知らなかった人たちについても多少のことはわかる。
そして、ただちにこの場所の意味が明らかになります。高杉晋作を除くと全員が禁門の変(蛤御門の変)で戦死しています。
すなわち、この場所はもともと蛤御門の変で戦死した人を祀った場所なんですね。
だから、池田屋事件で殉死した吉田稔麿はここにはいないのです。
そう知ってからもう一度写真を見てください。高杉の墓石だけがあきらかにほかの志士のそれとは異なっているのがわかります。

ということで、例によって安楽椅子探偵ごっこをやりますと、この高杉の墓石はあとから「合祀」されたものに違いない。高杉は1867年に病死していますから、本来はここに祀られる人ではないはずです。

じつは証拠があります。

2006_0822b この写真は杉蔵の墓の位置をメモ代わりにしようと、官修墳墓の入り口にある案内看板をデジカメに撮っていたものですが、よくご覧下さい、高杉晋作がないでしょう。この看板を作成した時点では、この場所には高杉の墓はなかったことが明らかです。
まあ、高杉も一人じゃさびしいだろうから、どっかに「合祀」してやろう、どこがいいかなあ、そうだやっぱり久坂玄瑞たちの禁門の連中の場所がよかろう、なんてことではなかったかと思うのですが、どうでしょうか。

ところで、インターネットで調べると知らなかった志士のことが多少わかると書きました。やってみましたか?
びっくりしました。有吉熊次郎良明は、なんと有吉佐和子の祖父なんですね。私的には今日、一番驚いたことです。85へえは行く。(笑)

そうと知ってりゃ、もっときちんとご挨拶してくるんだった。

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コメント

ご無沙汰しました。
偶々いま大仏次郎『天皇の世紀』を読んでいました。第二次長州征伐を前にして(慶応元年春)、高杉晋作は攘夷論を完全に放棄し、しかし藩内の攘夷派を恐れて讃岐に逃れ、入れ替わりに桂小五郎(木戸光允)が但馬出石の亡命先から長州に戻ります。大仏はこれ以降の桂を「生ける骸」と言い、蛤御門の変で有力者を総て失って「『志士』の時代がこれで滅びたと見てよい」と言っています。勿論伊藤俊輔(博文)や山縣狂介(有朋)などは「志士」に入れていない。
大仏次郎の明治維新観は、司馬遼太郎以上に今に至るも日本人に最大の影響を与えているようで、西郷や吉田松陰への思い入れも、井伊直弼に対する厳しい評価も、総て大仏の総括した明治維新に拠るもののようです。
その後高杉は病死、桂小五郎も維新後は病弱で十分な働きはしません。
維新の志士たちは長州では蛤御門の変で、水戸では天狗党の乱で殆どが失われましたが、仮に彼らが生き残って明治を迎えたらどうなっていたか?案外明治維新はもっと難産になっていたかも知れません。
志士の殆どが死に絶え、後に西郷、大久保、岩倉といった現実感覚の優れた少数者が残ったのが幸いだったのでは?

投稿: 我善坊 | 2006/08/28 21:54

時代背景も、その理由もまったく異なることではりますが、死者と生者といえば、岡野弘彦にこんな歌がありますね。

辛くして我が生き得しは彼等より狡猾なりし故にあらじか

『冬の家族』

ところでまた霊山護国神社のことになりますが、ご紹介の長州の蛤御門の変と、水戸の天狗党の乱の(護国神社側から見ての)殉難者の墓群は、通路を隔ててほど近くに位置していました。

投稿: かわうそ亭 | 2006/08/29 08:37

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