« 7月に読んだ本 | トップページ | 莫言、魯迅、ハジン »

2006/08/02

プラド美術館展から

大阪市立美術館で開催中のプラド美術館展に行った。
「スペインの誇り、巨匠たちの殿堂——ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス、ベラスケス、ムリーリョ、ゴヤ」というのが、案内ポスターやチラシのキャッチフレーズ。52作家81点を見ることができる。

個人的に面白かったのはスペインにおけるハプスブルク王家累代の肖像画だった。
べつに西洋史に詳しいというわけではないのだが、ブローデルの『地中海』を通読して、この王家の人々になんとなく親近感のようなものを抱いていたのだと思う。ああ、あなたがあのフィリペ2世でしたか、なんて感じで挨拶を交わすような楽しみがあった。

出品作品で言うと、こんな感じだ。

「皇帝カール5世と猟犬」ティツィアーノ〈1533〉
「フェリペ2世」ティツィアーノ(および工房)〈1552-1553〉
「フェリペ3世の教育の寓意」ティール〈1590頃〉
「フェリペ4世」ベラスケス〈1653-1657頃〉
「カルロス2世騎馬像」ジョルダーノ〈1693-1694頃〉

これらの肖像画は、なにより描かれた本人や一族の人々によって何度も何度も見つめられたはずである。かれらが何かの思いで見つめたものと同じものを、現在のわたしの目がいま見つめているのだと思うと、400年という時間の隔たりが一瞬消え失せる。肖像画が一枚の扉のように現在と過去を結びつけている、そんな錯覚が生まれる。

ブルゴーニュ侯カールがカルロス1世としてスペイン王位についたのが、1516年、スペインにおけるハプスブルク王朝の成立である。ルターの宗教改革がはじまった時代。その後、神聖ローマ帝国皇帝に選出される。やがてハプスブルク家はスペイン領とオーストリア領に分裂。
イエズス会が承認され、コペルニクスの弾圧、フランシスコ・ザビエルが日本に到着したのが1549年頃。

20060802 カール5世の後を継いでスペイン王となったのがフェリペ2世。カトリックの盟主として、この時代を代表する君主となる。ネーデルラントの反乱、レパントの海戦、天正少年使節との謁見、エリザベス女王との確執、アルマダの海戦など、わたしの大好きな時代のひとつである。

フェリペ3世は、この肖像画ではまさに3代目の駄目坊主の雰囲気を見せているし、ベラスケス描くフェリペ4世にいたっては、自分のコントールを離れて事態が進んで行くときに人が見せるような苦悩の表情を無防備に肖像画に曝しているようだ。
精彩のない騎馬像のカルロス2世がスペイン・ハプスブルク家の最後である。このあと王位はルイ14世の孫に移り、スペインはブルボン王朝に入る。1700年のことでありました。

|

« 7月に読んだ本 | トップページ | 莫言、魯迅、ハジン »

j)その他」カテゴリの記事

コメント

暑中お見舞い申し上げます。

美術館展にはあまり興味のないまま、関連イベントのスペイン映画会を目当てに、長引いた梅雨の久しぶりの晴れ間となった7月末に出向きました。

おっしゃるとおりハプスブルク王家累代の肖像画は、惹かれるものがありますね。歴史に弱くとも名画「ラス・メニーナス」は知っていたので、マーソ作「皇妃マルガリータ・デ・アウストリア」はつい見入ってしまいました。絵画右奥の4人の人物の中に「ラス・メニーナス」に描かれたマリ・バルボラがいたから。ではちいさいお姫様は幼いころのマルガリータ?とおもいきや 弟カルロス2世だったのです。滅びゆく運命が描かれていたのですね。ハプスブルク王家の肖像画展があればと興味をかきたてられました。

投稿: ミラー | 2006/08/02 21:54

こんばんわ。
あの「皇妃マルガリータ・デ・アウストリア」はよかったですね。今回の展覧会の白眉かもしれない。
「ラス・メニーナス」のマリ・バルボラが、控えの間にいるのはなんとも印象深い。この女道化は王女が嫁いだウィーン時代にもお付きでいたのでしょうか。マルガリータは22歳で死んでしまったそうですから、せめて幼い頃から仕えていたこの女官たちが最期までつきそっていてくれたらなんて思いますね。
ところでこの絵の幼女にしか見えないカルロス2世は、金羊毛騎士団章を首にかけていますが、これはカール5世、フェリペ2世の肖像にも出て来るものと同一なんでしょうかね。しかしどう見てもこの子の服装はスカートですね。日本でもからだの弱い子供はわざと女装をさせて災いを避ける風習があったが、あれと一緒かしら。いくつか宿題ができました。(笑)

http://pinkchiffon.web.infoseek.co.jp/Margarita.htm

投稿: かわうそ亭 | 2006/08/02 22:49

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23898/11211377

この記事へのトラックバック一覧です: プラド美術館展から:

« 7月に読んだ本 | トップページ | 莫言、魯迅、ハジン »