capote クラシックな傑作
あるイギリス人がニューヨークへ行った。どのパーティに出ても、トルーマン・カポーティの『冷血』の噂でもちきりである。みんながあまりすごいすごいというので、どこへ行けば売っているかと訊いたら、まだ出ていないという。書いている最中なんですね。
「どうしてあなたは出ていない本を褒めるのか」と、あるパーティで『冷血』の話をしている女の子に言ったら、「あなたはどうして読んでもいない小説の悪口をいうのか」と言われた。(笑)
これは、残念ながら何の本から抜いたのか書いていないのだが、対談集かなにかの丸谷才一さんの発言。
映画「カポーティ」を見ながら、このエピソードを思い出した。映画の中でもニューヨークのスノビッシュなパーティ風景が何度か出て来るが、いかにもありそうな話で、60年代アメリカの文芸愛好家連中のちょっと気取った当時の雰囲気をよく伝えているのだろう。
ここで、急いで恥をしのんで白状しておくが、わたしはカポーティの小説を一冊も読んだことがない。「ティファニーで朝食を」にいたっては映画さえ見たことがない。たまたまだと思うのだけれど、この作家はどうも食指が動かなかったのですね。
映画「カポーティ」を見るまで、この作家がカミングアウトしたゲイであったことも知らなかったのだが、なんとなくわたしが読まずぎらいを決め込む作家や詩人は、ゲイであることが多いのはなぜだろう。一度、よく考えてみたほうがいいかなあ。(笑)
さて映画「カポーティ」は前評判に違わぬよい出来で、こういう映画は大好きであります。クルマやファッションやインテリアなどが、重厚で渋くて見ていてため息がでるくらい絵になる。
ところで、これまたこの映画を見るまで知らなかったことだが、『アラバマ物語』の作者であるネル・ハーバー・リー(映画ではキャサリン・キーナーが好演)は、カポーティのアラバマ時代の幼なじみだったんだそうです。へえ。
いやじつは、映画の「アラバマ物語」もわたしは見ていないので、つくづく、カポーティには縁がなかったということになる。(笑)
でもせっかくだから、二、三冊カポーティは英語で読んでみるとするかな。
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コメント
TBさせていただきました。
シーモア・ホフマン。
まさに怪演といった感じで素晴らしかったです。
投稿: タウム | 2006/10/04 00:58
こんにちわ。実際にあんな個性的な人間がもし身近に現れたら、反発するにせよ心酔するにせよ、とても平静は保てないだろうなあ、というオーラを見事に醸しておりましたね。アカデミー主演男優賞は納得です。
投稿: かわうそ亭 | 2006/10/04 07:48
私もトラックバックをさせていただきました。
「アラバマ物語」は、私も知ってはいましたが読んだことも
映画(たしかグレゴリー・ペック?)を見たこともなく、
ましてその作者がカポーティの友人だとはこの映画を見るまで全く知りませんでした。「ティファニーで朝食を」は、映画を先に見たような記憶がありますが、原作の味わいは、ヘップバーンの魅力とは全然別のものでした。一読の価値ありと思います。
投稿: ピノコ | 2006/10/05 08:30
こんばんわ。コメントありがとうございます。
観客としてあの映画みていると「冷血」とは、カポーティ、むしろあんたのことじゃないか、とだんだん思えてくるあたりが、じつによくできていましたね。
投稿: かわうそ亭 | 2006/10/05 22:03