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2006/10/31

カワウソ暮らし

2006_1030 梨木香歩さんの『家守綺譚』(新潮文庫)は、以前に紹介した今市子さんの「百鬼夜行抄」のようなお話。
異界とこの世は重なりあっているのだから、死んだ親友が床の間の掛け軸の中から出てきても、「どうした高堂、逝ってしまったのではなかったか」ですんでしまう。カッパがでたり、龍が昇天したり、狐や狸が人を誑かす古き良き時代。
そんな話のなかに、主人公の綿貫征四郎がたまたま行き合ったカワウソに気に入られて、家に鮎を届けられるエピソードがある。
少々の怪異や「もののけ」には寛容な隣家のおかみさんも、カワウソなんかに魅入られてしまってはあぶない、あぶないと主人公を諭すのであります。カワウソに見込まれると、かれが人に化けて魚を釣るのを、一日中、ぼうっと見物させらる。命に別状はなくとも、そんなことに毎日付き合わされてしまっては、人間、生活というものがなりたちませんよ、あなた・・・
そんな忠告にも関わらず、主人公が家に帰ると流しに鮎が数匹おいてあるではないか。ははあ、カワウソの奴、つけてきたのか。

次の朝、いつものように家の前を掃いていたおかみさんに、鮎の話をすると、ひえっと、露骨に禍々しいことを聞いたような顔をされた。
——それで、まだ食べてないんですね。
——はあ、まだです。
——それは不幸中の幸い。きっとカワウソに、同類と見込まれたんですよ。大変だ。またきますよ。取り憑かれたら、一生、カワウソ暮らしだ。
実を云うと、私はこのとき、その「カワウソ暮らし」という語に激しく引かれる気持ちと、おかみさんの云うとおり、大変だ、という気持ちの二つを同時に感じたのだった。

ははは、一生カワウソ暮らし、いいではないか。ねえ。(笑)

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