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2006/11/21

Echo Park / Michael Connelly

マイクル・コナリーの『ECHO PARK』を読む。ハリー・ボッシュものの最新作。
本書の出版は2006年の9月だが、小説の中の「現在」も同じ2006年の9月から始まる。つまり本の中の「現在」と、こちらの「現在」とがきっちり同期していて、アクチュアルな感じを強める仕掛けになっている。まあ、これは新刊が出た直後に本書を読む人だけのお楽しみではありますが。

2006_1121 コナリーがこの作品を書いていたのは、当然2006年の9月より前だから、その執筆の時点では、かれは十数ヶ月先のロスを舞台に小説を書いていたということになる。しかし、本書にはさまざまな法執行機関の人間が関係してくるので、もしこちら(現実)のほうで911のような事件がロスで発生してしまったら、それにまったくふれていないストーリーは不自然なことになりかねない。
もっとも、そんなことを言い出せばきりがない。そうなったら、ま、しゃあないか、ということだろう。別に、テロ対策がテーマの内容でもないことだし。

さて本書、コナリーらしい、ツイストのよくきいたミステリーで、ぐいぐい読ませるのはいつもの通り。
具体的なストーリーにふれるつもりはないが、連続殺人犯が死刑を免れるために司法取引を申し出ることがオハナシのひとつのポイントになっている。未解決のままで行方が分からなくなっていた若い女性を埋めた場所を教えて、被害者の両親に娘の遺体を返してやるかわりに、検察は死刑求刑をしない(終身刑の求刑にする)という取引である。ただ頭の切れるシリアルキラーが申し出た取引が本物かどうか——担当検事がボッシュに状況を説明する。

This coud all be a trick to avoid the needle or it could be the real thing.

「to avoid the needle」という言い回しは、他にも数カ所出て来る。人道的な死刑執行というのもなんか変な表現だが、アメリカの死刑をおこなう州では、この薬物注射による処刑(リーサル・インジェクションと言うらしい)が主流になっている。ざっとみたところでは、ネブラスカ州だけがいまだに電気椅子のようだが、べつにわたしは詳しいわけでもとくに興味があるわけでもないので違っているかも知れない。『IN COLD BLOOD』のペリーとディックは絞首刑だったな。あれは1965年のカンサスだった。いまはどうなんだろう。
いずれにしても、薬物で殺すのが一番苦痛がなく、また失敗の可能性も薄いということだと思う。電気椅子でうまくことが運ばない顛末は「グリーンマイル」にもあったが、たしかにああいう処刑を見せられた方はたまらんだろう。薬物の方が、なんぼか慈悲がある。
死体を埋めた場所の実況見分で、のらりくらりした態度を見せた犯人に刑事が、そんなら、もう取引はやめるぞと声を荒げる場面——

"You take us to the body right now or we go back, go to trial and you get the hot shot of Jesus juice you've got coming. You got that?"

生きのいい現代米語を知るのも、ミステリーを洋書で読むたのしみのひとつだが、それにしても、ジーザス・ジュースとはこれまた罰当たりな。(笑)
この言葉、文脈から具体的な意味は明白だが、ロスの刑事と悪党の悪罵の応酬の背景には、もしかしたらマイケル・ジャクソン裁判のネタが入っているのかもしれない。
ネバーランドで、子供たちに飲ませたワイン入りコーラのことを「ジーザス・ジュース」とマイケルが言っていたとかなんとか。

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