ワーズワースの庭で
最近、拾い読みをした雑誌類の中で、なぜか心に残って、おりにふれて反芻している話。
岩波「図書」11月号に掲載された河野裕子さんの「羊の時間—イギリス湖水地方短歌の旅」。河野さんが、今年の6月に、総勢24名でNHK学園の短歌の旅をなさったときの軽いエッセイである。
バスのなかで昨日ワーズワースの家の庭で大門さんと長いあいだ話したことを考えていた。ご主人は経済学者、大門一樹氏。「一〇年前に夫が死んだときなんだけど。死ぬまえに昏睡からさめて、紙にやっと字を書いた。もう目が見えていなかったのね。字のうえに字が重なって。そしてまた昏睡して一日して死んだの。死んでから、毎日まいにち紙の字を一週間見つめていてやっと読めたわ。アリガトウ、モウ、ワガママハ、イワナイって書いてあってね。それを、わたし額に入れてあるの。三ヶ月ほど夫が死んだのが信じられなくて、三、四年たって、人は死ぬんだってやっと腑におちた。骨は海に散骨したの。」
旅の最終日はロンドンの宿で歌会だった。
河野さんがとった大門さんの歌。
丘の上に一頭の馬立つをみぬ青草の野と空のはざまに 大門恵美子
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コメント
私の祖父にあたる人の最期を偶然
このページで知ることが出来ました
ありがとうございました
投稿 大門恒介 | 2006/12/14 02:42
大門恒介さま
年のせいかも知れませんが、おじいさまとおばあさまのお話、自分の命が終わるときを想像して、こんな風に相手に思ってもらえたらと、なにか、かなしく美しい話を教えてもらったような気がしています。
もっとも、いつもはテキだの、ball and chain だの slave driver だの悪口を言ってますが。(笑)
素敵な歌をお詠みになるおばあさまをお持ちですね。
投稿 かわうそ亭 | 2006/12/14 22:01