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2006/11/05

ワーズワースの庭で

最近、拾い読みをした雑誌類の中で、なぜか心に残って、おりにふれて反芻している話。
岩波「図書」11月号に掲載された河野裕子さんの「羊の時間—イギリス湖水地方短歌の旅」。河野さんが、今年の6月に、総勢24名でNHK学園の短歌の旅をなさったときの軽いエッセイである。

バスのなかで昨日ワーズワースの家の庭で大門さんと長いあいだ話したことを考えていた。ご主人は経済学者、大門一樹氏。「一〇年前に夫が死んだときなんだけど。死ぬまえに昏睡からさめて、紙にやっと字を書いた。もう目が見えていなかったのね。字のうえに字が重なって。そしてまた昏睡して一日して死んだの。死んでから、毎日まいにち紙の字を一週間見つめていてやっと読めたわ。アリガトウ、モウ、ワガママハ、イワナイって書いてあってね。それを、わたし額に入れてあるの。三ヶ月ほど夫が死んだのが信じられなくて、三、四年たって、人は死ぬんだってやっと腑におちた。骨は海に散骨したの。」

旅の最終日はロンドンの宿で歌会だった。
河野さんがとった大門さんの歌。 

丘の上に一頭の馬立つをみぬ青草の野と空のはざまに  大門恵美子

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コメント

私の祖父にあたる人の最期を偶然
このページで知ることが出来ました
ありがとうございました

投稿: 大門恒介 | 2006/12/14 02:42

大門恒介さま
年のせいかも知れませんが、おじいさまとおばあさまのお話、自分の命が終わるときを想像して、こんな風に相手に思ってもらえたらと、なにか、かなしく美しい話を教えてもらったような気がしています。
もっとも、いつもはテキだの、ball and chain だの slave driver だの悪口を言ってますが。(笑)
素敵な歌をお詠みになるおばあさまをお持ちですね。

投稿: かわうそ亭 | 2006/12/14 22:01

大門恒介様

突然のメール失礼いたします。
小生阿川球三と申します、74歳、実は大学時代立教大学法学部卒ですがクラスメイトであった友人大門一樹君を探しております、お父様は経済学者であった大門一樹先生であったと覚えております、大学に問い合わせても住所不明で
同窓会でもお目にかかれませんでした、同氏とは特別の
思い出あり、是非とも連絡とりたいと願っております、
もしやご親族の方と思い失礼ながらメール差し上げております。もしご親族の方ならばご一報いただければ幸いです。

阿川拝

投稿: 阿川球三 | 2020/11/29 10:13

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