記憶という名のタイムトラベル
『タイムトラベラーズ・ワイフ』オードリー・ニッフェネガー(ランダムハウス講談社)を読む。
この小説、昨年Flickrに、この写真(ジュンク堂難波店の海外小説書棚)を掲示していたら、しばらくして、ある人がたくさん並んだ本の中からこの本を見つけて「この本大好き!」と教えてくれたもの。(さてどこにあるでしょう?答えは写真をクリックすとわかります)もっともその方は英語で読んだので、翻訳のほうは読んでいないが、ぱらぱらと見た限りでは訳もよさそうだった、というコメントだった。
そんなことがあったので、そのときさっそく読んでみようと思ったのだが、たぶん図書館で予約待ちかなにかだったのだろうな、なんとなく縁がなくてそのまま忘れてしまっていた。
ところが、つい最近、やはりFlickrの「what's in your bag?」というグループの写真を眺めていたら、この本(英語のペーパーバックだったけど)をかばんに入れている人があって、これとってもいい本だよねという感じのコメントがたくさんの人から寄せられているのを見かけたのだ。(ここ)
まあ、そんなわけで、そうそうこれ読もうと思ってたんだよねと思い出したというわけ。
今回わたしは原文は見ていないが、丁寧ないい訳だと思った。翻訳は羽田詩津子。
題名からして、タイムトラベルもののSFとして読んでもいいのだけれど、あまり小うるさいタイムパラドックスがどったらこったらというのはなくて、普通に面白くて少し哀しい物語として楽しめる。
このタイムトラベルものというジャンル、いろんなアイデアがもう出尽くした感がある。たとえば浅田次郎や宮部みゆきなんかのエンタテインメントは面白いがさほどオリジナリティがあるとは思えない。
しかし、この作品のアイデア、わたしは、「へえ、まだこんな手が残っていたか」とびっくりした。上下二巻で、ちょっととっつきにくいが、読み始めるとオハナシの世界に引き込まれる。そして読後、しばらく「こちら」に戻ってくるのが億劫になる。
エピグラフにA・S・バイアットの『抱擁』が選ばれているのも嬉しい。
中身は例によって、読んでのお楽しみだが、時間を行ったり来たりするタイムトラベルと人間の記憶という作用を組み合わせたときの意外な発見がこの本のミソだろう。わたしたちの記憶も、時間を越えるタイムトラベルの一種なのだから。
これはもう好きにならずにはいられない素敵な小説だな。
オススメ本です。
なお、上下をそろえて並べるとカバーの絵がなかなかよい。装幀はこやまたかこ、装画は野田あい。
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