ユメ十夜
映画「ユメ十夜」を観る。
漱石の『夢十夜』を下敷きにした十話のオムニバス映画。それぞれ十夜の夢を別々の監督が撮っている。原作にかなり忠実な映像もあるし、原作は映像をインスパイアする核になっているだけの作品もある。(じつは大半が後者である)
だが原作とまったくかけはなれたかに思えた作品が、あとでもう一度斜め読みすると、意外に漱石の夢の雰囲気を生かしているように思えるところもある。
こうしてさまざまなテーストの映像作品を続けざまに見ていると、日本映画の今現在の質をはかることができるようだ。そしてその質は、嬉しいことに結構高い。
以下それぞれのスタッフ、キャストの一部を自分用の覚えとして。
第一夜 監督:実相寺昭雄/脚本:久世光彦/小泉今日子
第二夜 監督:市川崑
第三夜 監督・脚本:清水崇/香椎由宇
第四夜 監督:清水厚/脚本:猪爪慎一
第五夜 監督・脚本:豊島圭介/市川実日子
第六夜 監督・脚本:松尾スズキ/TOZAWA
第七夜 監督:天野喜孝・河原真明
第八夜 監督・脚本:山下敦弘
第九夜 監督・脚本:西川美和/緒川たまき、ピエール瀧
第十夜 監督・脚本:山口雄大/本上まなみ
個人的に気に入ったのは、第六夜の、ほとんど全編がTOZAWAというダンサーの切れのよい音楽に合わせたダンスで構成された一編。
ちなみに漱石の小説はこう始まる。このなんともバカバカしいような味がよく出ている。
第六夜
運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評をやっていた。
第一夜の実相寺昭雄と久世光彦はすでにこの世の人ではない。あるいはこれが遺作ということになるのかも知れない。
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コメント
ここでの紹介で知り、法事を終えての帰り、観てきました。
調べ物ついでに、原作はあおぞら文庫を利用して、二、三年前に読んだばかりでしたが、忘れていたことも多く、もう一度読み返す時期かもしれません。
法事の後ゆえ、案の定、一夜分は、眠ってしまいましたが、思わず劇場内で笑いが起こる、エンタメ系でした。
幻想美からややはずれた、人間の姿でない生物のつくりは、好みでなかったのですが、松山ケンイチ君はじめ俳優さんたちは、特殊メイクでないシーンでは、美しく目の保養をさせてもらいました。第二夜の掛け軸や時計、襖の美術道具はもう一度よく観て、くわしく知りたいと思いました。
第六夜、ラストの彫り物がちょっといただけませんでした。そこまではよかったのに残念。
劇場での映画鑑賞は久しぶりで、予告編での紹介も、あれもこれも観たい!!と刺激的な2時間となりました。
投稿: ミラー | 2007/02/01 20:40
はは、じつはわたしも二話ばかり途中で寝てしまったのがあります。でも、全部夢の話ですからね。眠くなる方が自然かもしれない。
わたしの方は男優諸君は、まあ、あんまり興味がないので(笑)、香椎由宇と緒川たまきのお二人に注目。目を楽しませていただきました。着物姿はやはりきれいですね。
投稿: かわうそ亭 | 2007/02/01 21:22