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2007/02/21

「俳句界」の編集長交代(承前)

文學の森のサイトによれば、この会社の設立は2003年5月20日。本社は福岡市、代表取締役が前回紹介した    姜琪東(カン・キドン)氏である。あとで述べるが、編集にかかる重要な案件については社長が急遽上京することもあるように「俳句界」には書かれているので、どうやら姜琪東氏の財政的な基盤は福岡市にあり、「俳句界」の基本的な編集自体は、この人が信頼する東京の編集者にまかせるという経営スタイルであるらしく思える。なお、この姜琪東氏については、最初に書いたように、ご本人が公開している情報しかわたしはもっていない。仮説はあるが述べるつもりはない。

さて句集『ウルジマラ』にある「頼まれて出版社の経営をひきうける」という前書きをつけた句を見つけたあとで、「俳句界」のバックナンバーを見て行くと、奇妙なことに気づいた。前回書いたように、現在の奥付の発行人は姜琪東名義だが、以前はこれが大山基利という名前になっているのである。では、姜琪東氏は、大山基利氏から「俳句界」(文學の森)の経営を引き継いだのかというと、これは違うのですね。
この発行人の表示がいつ変更されたのかというと、2005年の八月号である。
参考に奥付の雑誌編集体制の表記を転載する。左が七月号、右が八月号である。あとで出てくるので発行人以外の名前も見ておいていただきたい。

 発行人  大山基利    発行人  姜琪東   
 編集人  山口亜希子   編集人  山口亜希子
 編集顧問 秋山巳之流   編集顧問 秋山巳之流

これはどういうことかしらと、「俳句界」のこの変更があった前後の記事をぱらぱらと見て行くと、当人による説明があった。「俳句界」2005年十月号の「俳句の明日」というコーナーである。対談形式で「K」と「A」という二人が「トーク&トーク」しているという形式の連載。「K=姜琪東(文學の森社長)」、「A=秋山巳之流(本誌編集顧問)」と断ってある。引用する—

K 先月号の本欄を読んだ方から「文學の森は社長が交代したのですか?」というハガキを受け取りました。
A 姜琪東という名前が出たからですね。編集長が地方へ行ったら、「また発行人の変更ですか」と言われたらしいですよ。
K 社長は代わっていません。ずっとぼくです(笑)。
A 楸邨さんの「寒雷」に投句していた頃から、あなたは俳句の世界では姜琪東を名乗っていましたね。
 大山も姜もわが名よ賀状来る  姜琪東
これは大山社長、あなたの俳句でしょう?
K 若いころは通名の大山基利を名乗っていたのです。六十歳も半ばを過ぎ、生命の果てがぼんやり見えてきた時、もう通名を名乗るのをやめようと決めたのです。姜琪東として、文學の森の仕事を全うしたいと考えて、社員たちの意見を聞きました。そして「俳句界」八月号から発行人の名を本名に変えました。

この発言から、想像するに〈職ふたたび偽名ふたたび酸葉噛む〉の句は、大山基利として経営を始めたと思われる2003年のことなのだろう。

さらにバックナンバーを見て行くと、わたしは知らなかったが(この頃はこの雑誌をチェックしていなかったのだな)2005年の2月号にもうひとつ奇妙な告知を発見した。当然、このときは大山基利名義。
それは、「『俳句界』新年号の回収と責任」という社長告知である。内容は、新年号の見本のなかに不適切な編集サイドの記事があったために、驚き、この発行を差し止めるために急遽上京し、編集サイドと協議したが、すでに取り次ぎを通して書店への配本が進んでいたため、書店には販価での全册買い戻しを申し入れたというもの。記事の内容についての最終責任は当然、編集長である山口亜希子にあり、また事前に記事の判断を編集長に打診され、この内容で問題なしとの判断をした編集顧問・秋山巳之流にも責任は及ぶ。人事上の処分も検討したが、小規模の出版社でこれをなすことは雑誌の廃刊につながりかねないので、読者の寛大な許しを請いたい、といった感じのものであった。
いま、この記事がどのようなものであったかは詮索しないが、今回の清水哲男氏への編集長の変更と、このトラブル(もう4年前のことである)がなんらかの関係があるのかないのか、俳句の世界もなかなかややこしいことではあります。

なお、補足として簡単に書くが、秋山巳之流氏はかつて角川俳句の編集長である。この名前でググると、結構たくさんの俳壇や歌壇の内部の方のコメントがヒットするはずである。いずれも直接の見聞ではないので、わたしのコメントは差し控える。

また、山口亜希子氏については、「山口亜希子俳句日記」というブログが公開されており、わたしも一通り目を通させていただいたが、今回の「秋山&山口更迭」についてはよく情理をわきまえた抑制された書き方であり(愚痴めいた記述はすべて削除した旨書かれている。そうあるべきだろう)、もちろん面識はまったくないが好感をもったことも書き添えておきたい。

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コメント

回収になった『俳句界』の内容は、文學の森のパーティー報告の記事内で、パーティーに出席した客の品性を貶める内容が編集部名で書かれていたものです。どういう意図でそんな記事を書いたのか理解に苦しんでいたところ、その部分を当たり障りなく差し替えたものが送られてきて、前のものは着払いで送り変えてほしい旨の長文の手紙が添えられており、空々しく思ったことを記憶しております。

投稿: 俳句界元読者 | 2007/03/04 08:05

俳句界元読者さま そのときの様子をお教えいただきありがとうございました。なんだかよくわからない話ですねぇ。


投稿: かわうそ亭 | 2007/03/04 22:10

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