「俳句界」の編集長交代
今日も俳句雑誌の話題。ただし、わたしは業界の内部情報なんか知らないから、活字となって表に出ている内容から勝手に想像しているだけである。別に事情通を気取ろうというつもりはまったくないので、もし「素人がよく知りもしないくせに」と関係者の方が不快にお思いになれば申し訳なく思う。しかし、俳句総合誌というのは、営利事業ではあっても、同時に俳句を愛する人たちの一種の公共財でもあろう。そこから大家の名前を冠した賞が出されている場合はなおさらである。
野次馬かも知れないが(否定はしない)興味を持って悪いとは思わない。ただし話はいたって散漫で、尻切れとんぼに終わるはずなので、この記事をなにかの参考資料にされては迷惑である。
さて昨日書いたように「俳句朝日」は実質的に廃刊となるが、同じB5版の大きさの「俳句界」という雑誌がある。発行元は株式会社文學の森。
それほど熱心な読者とは言えないけれど、ときどき面白そうな特集があると図書館でチェックしている。なかなか、面白い記事がある。
さて今日、二月号にざっと目を通して、最後に巻末の編集後記のような頁を読み、奇異の感を抱いた。そこには、文学の森社長・姜琪東が、三月号から編集長に清水哲男を迎えるという主旨のお知らせを書いていた。
性分なので、これはなんかヘンだなあと気になって、図書館で調べはじめたとお考えください。(笑)
もちろん、清水哲男といえば、H氏賞を受賞した高名な詩人であり、われわれ俳句愛好者には「増殖する俳句歳時記」で圧倒的な存在感をウェブでは示しておられるわけで、あらたに俳句総合誌の編集長として腕を振るわれることにまったく異論があるというわけではない。ただひとつ気になったのは、交代前の編集長は誰かしらというごく素朴な疑問であった。奥付を確認すると
発行人 姜琪東
編集人 山口亜希子
となっている。どうやら山口亜希子さんという方が、編集長である様子である。
一方、文學の森のホームページ(リンクは上記)を見ると、すでに「俳句界」編集長は清水哲男と公表されているようだ。
ところで、発行人の姜琪東(カン・キドン)という名前には聞き覚えがある。
1997年に句集『身世打鈴(シンセタリョン)』を、2006年に『ウルジマラ(泣くな)』を出した在日の俳人である。いま『ウルジマラ』のカバーにつけられた著者の紹介をみると「1937年高知生まれ、横山白虹、加藤楸邨に師事」という記述が見える。俳歴の長さがうかがえる。
こころみに『ウルジマラ』を読んでみると、そのなかに「頼まれて出版社の経営をひきうける」という前書きをつけた句がある。
職ふたたび偽名ふたたび酸葉噛む
なんだか意味深な句ではないか。これがいつ詠まれたものなのかはわからない。しかし、口ぶりからすると、先の「俳句朝日」の経営優先主義とは異なって、俳句なんて全然儲からない事業だが、志に感じて経営の面倒をみてあげようという感じに聞こえる。
ちなみにこの『ウルジマラ』は句集としてもたいへん興味深いもので、とくに俳句と朝鮮語についてはあらためて考えてみたい気になる。もう一句だけあげておく。
日本語のわが一行詩しぐれけり
この話、長くなったので頁をあらためてもう少し続ける。
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コメント
「俳句朝日」といい、この雑誌を含め、その他、ろくな雑誌がないのが、日本の現状です。
投稿: Ban'ya | 2007/02/23 08:23