« 鰻の包丁 | トップページ | 三つ編みで参上仕る »

2007/03/20

石井桃子さんの100年

これは何度もお話ししていることですが、一九三三年のクリスマス・イブのことです。その頃、文藝春秋に勤めていた私は、仕事の関係で親しくしていただいていた犬養健さんの御宅にお邪魔しました。そこに。イギリスから帰国された健さんのお友達から、お子さまたち(道子さんと康彦さん)へのプレゼントとして、「The House at Pooh Corner」という本が届いていたのです。おふたりに「これ読んで」と言われて読みはじめ「雪やこんこん、ポコポン」というところにさしかかって、私はふいに不思議な世界に迷いこみました。紗のカーテンのようなものをくぐりぬけて、まったく別の温かい世界をさ迷っていたのです。

427429987_f5f861e269 新潮社の「yom yom」vol.2の特集は、3月10日に百歳を迎えられた石井桃子さん。引用は、特集のインタヴューのなかで石井桃子さんが語っているもの。ここで「イギリスから帰国された健さんのお友達」というのは尾崎秀実などといっしょにゾルゲ事件で逮捕された西園寺公一のことだが、このあたりのことは、犬養道子さんの本などをお読みの方はよくご存知だろう。
この特集の中には「74年前のクリスマスの晩に」と題する犬養康彦さんの文章もあって、石井桃子さんがはじめてプーさんに逢った夜のことが語られている。
この夜のこともふくめて、犬養家の人々と石井桃子さんに興味を持たれた方は、私などが書くより、痒いところに手が届くような塩梅で、このあたりのことを丁寧に紹介してくださっているブログがあったので、そちらをぜひお読みください。連載でまだ終わっていないようですが、とてもおもしろい。まずは「犬養家のメアリー・ポピンズ」あたりを一読し、引き続き前後を読まれていくのがいいかもしれない。【こちら】

さて100歳をこえられた石井桃子さんだが、あるとき中川李枝子さん(『いやいやえん』の作者ですね)をお相手に、こんなことをおっしゃったとか。

少し前に石井さんが「中川さん、あなたに言っておきますけれど」と、真面目なお顔でおっしゃった。そんな風にお話しになることはめったにないのでどきっとしましたら、「九〇歳まではなんともなかったけれど、九五歳を過ぎたらがくっときて、あちこちいろいろ出てきてしまったの。あなたもお気をつけなさい」って。

|

« 鰻の包丁 | トップページ | 三つ編みで参上仕る »

c)本の頁から」カテゴリの記事

コメント

拙ブログを懇切にご紹介下さり、ありがとうございます。
子供の時分から石井桃子さんの恩恵にさんざん浴してきた者として、ささやかなオマージュを捧げたい一心で、拙い文章を綴っております。
ところで、かわうそ亭さんの愛読書ベスト・セレクションは素敵ですね。小生未読の本も多いのですが、ディネーセンやウッドハウスの名を発見して嬉しく思いました。
これからもどうぞよろしく。

投稿: 沼辺信一@千葉 | 2007/03/20 12:13

沼辺信一さま こんにちわ。
とても素敵な記事を読ませていただきありがとうございました。
本日の最終回の記事のおしまいに「なんという幸福な人生であろう。」と書いておられることに心から共感いたしました。ですが、それは続けて書いておられる「一粒の麦もし死なずば」ということと無縁ではありえず、であればこそ、わたしたちはこのような気高い精神を目の当たりにできた喜びをかみしめるべきなのだと思います。

これからもどうぞよろしくお願い致します。

投稿: かわうそ亭 | 2007/03/20 19:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23898/14323200

この記事へのトラックバック一覧です: 石井桃子さんの100年:

« 鰻の包丁 | トップページ | 三つ編みで参上仕る »