Empire Falls
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2005年5月に全米のHome Box Officeで二夜に分けて放映されたテレビ・ムービーだが、出演者が豪華なことで話題になったようだ。日本ではwowowが先月放映した。
主人公はエンパイヤ・フォールズというさびれた町の食堂エンパイヤー・グリルのマネージャーであるマイルス・ロビーという一見冴えない男。これをエド・ハリスが演じている。その父親役にポール・ニューマン。マイルスの別れた妻がヘレン・ハント。食堂のオーナーであり、町を事実上支配している一族の冷酷な女主人フランシーンにジョアン・ウッドワード(ポール・ニューマンの奥さんですな)。
回想シーンに登場するマイルスの死んだ母親がロビン・ライト・ペン。(ショーン・ペンの奥さんですが、わたしこの女優を「Message in a Bottle」で知ってからのファンであります)彼女が休暇中に情を通じたC.B.という男が実は町の支配者一族の旦那(つまりフランシーンの夫)なんだけれど、これを「capote」のフィリップ・シーモア・ホフマンが見事に演じている。そのほかに、町の警察官のウィリアム・フィクトナーなど、個性的で一度見たら忘れられないような役者がたくさん登場する。
原作はリチャード・ルッソの小説で2002年のピュリッツアーを受賞。このTVムービーもエミー賞やゴールデングローヴ賞を受賞しているそうであります。
さて、この映画、錯綜した人間関係のなかで、あきらめていた夢や、自尊心を取り戻す勇気や、親子の愛情など様々なことを描いたなかなかいい作品なのだが、後半で学校での銃乱射事件がひとつの山になります。
ひとりの孤独で内気な少年が、マイルスの娘ティック(ダニエル・バナベーカー)に思いを寄せる。ティックは賢くて美しい少女だが、どちらかといえばおとなしく、美術関係に進むつもりのようだ。この少年がフットボールの花形選手で親分気取りの生徒にいじめられるのを、彼女はかばって美術クラスでは同席してやっている。(校長がそうしてやってほしいとたのむのを承諾したのだ)しかし貧困家庭で祖母以外の保護者もなく、学校では孤立し執拗ないじめにあっている少年に対して、「親切」で応えることはできても、それ以上の少年の望みには応えてやることはできないティック。
やがて破局が訪れる。
少年の抱き育んだ「夢」は生徒たちに銃弾を浴びせ、ティックを撃ち殺すことだった—
報道によれば、一昨日のヴァージニア工科大の「shooting rampage」の犯人も、なにか暗い「夢」をその心の奥底で育てていたように思える。この事件の背景は、よくわからないが、焦がれるほどの恋慕にとっては、「ただ親切なだけ」は拒絶よりかえって仇になることもある。あるいはそういうことだったのではないかという気がするな。
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