俳句の技法
ウェブマガジン「週刊俳句」の第3号、「十二音技法」が俳句を滅ぼす(遠藤治)という記事がおもしろい。
「十二音技法」というのは、まあ一種のジョークみたいな表現なのだが、「五七五のうち十二音だけ考えてあとは適当に季語をあしらう」という作り方のこと。
はは、大きな声では言いたくないが、じつはこれ、わたしもよくやります。(笑)
ところでこの記事に対するコメントで、こういう技法が「とりわけ初心者指導の現場において、まことしやかに流通している」という具体例はあるのかという指摘がありました。初心者指導の現場というのが、カルチャー・スクールとかなんとかそういう意味であれば、そういうものには出たことがないので知りませんが、初心者向けの入門書ではこのノウハウがたしかに説かれておりますね。
わたしがすぐに思い浮かべたのは、藤田湘子の『新・実作俳句入門』(立風書房)。
ここで藤田は現代俳句には次のような「原型」があると教える。
- 上五に季語があって「や」切れになっている。
- 下五には名詞が置かれてある。
- 中七下五は一つながりのフレーズである。
- 中七下五は、上五の季語とかかわりない内容である。
- 中七の言葉は下五の名詞のことを言っている。
もちろん藤田湘子は「これであなたも5分で俳句作家!」なんてことを言ってる訳ではなくて、こういう原型、典型を体が覚えるまで百でも二百でもつくる練習をすることで俳句の基本が身につくと言うのでありますが、それはともかく、これはかなり実戦的なメソッドでありますね。とくに(4)の「中七下五は、上五の季語とかかわりない内容である」というところがキモです。
藤田湘子は、あることで、わたしは人間として信用できないタイプだと勝手に決めつけておりますが、俳句は上手い。その上手さ(と信用のならなさ)がこういうメソッドにもあらわれておりますが、なんのことはない、わたしもこのテはちゃっかりいただいていますので、あまり偉そうなことは言えないか。
さて、この「十二音技法」の記事では、最後にテストがあります。次のような句をキミタチちゃんと鑑賞できるかね、という問いかけ。
をりとりてはらりとおもきすゝきかな 飯田蛇笏
鰯雲人に告ぐべきことならず 加藤楸邨
中年や遠くみのれる夜の桃 西東三鬼
たましひのまはりの山の蒼さかな 三橋敏雄
このうち楸邨の鰯雲について、たまたま丸谷才一が面白いことを言っているのを最近読んだので、別にテストの答案というわけではないが、ちょっと紹介してみよう。
(この項続く)
| 固定リンク
「d)俳句」カテゴリの記事
- 蕪村句集講義のこと(2020.12.10)
- 『俳句の詩学・美学』から二題(2014.04.13)
- 蛇穴を出づ(2014.04.05)
- 農工商の子供たち補遺(2013.10.23)
- もの喰う虚子(2013.06.25)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント