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2007/06/20

あるお詫び広告

「出版ダイジェスト」2007年5月21日号に、日本経済評論社代表・栗原哲也の〔お詫びとお知らせ〕と題する広告が載っている。
同社が昨年暮れに刊行した丸川哲史・鈴木将久編『竹内好セレクション1・2』について、この底本であるところの筑摩書房版の全集(全17巻)との相違、誤記、誤植、脱落等があり、その「数と質において」到底「正誤表」では済まされないと判断し、同書の書店在庫を回収し、購読者に対しては訂正後の新本交換を行うという内容である。
広告の末尾はこうなっている。

この事態を聞き知った同業や書店から、なんでそこまでするんだとか、自棄になっているんじゃないのか、と心配と揶揄を込めた声が八方から伝わってきた。自棄になっているわけではない。改めて自戒しているのだ。本を作るとはどういうことか、不特定多数の人に文あるいは学を有償で頒布するとはどういうことか、と。作り直すということで、事が終わるわけではないが、われわれの生態はかくも、責任や広がりがあるものなのだ、ということを、つぶらな瞳を輝かせている当の担当編集者を含めて確認したかったのである。五月末、気合いを入れ直して、誤植なき新本を作ります。お買い求めの皆様、ご通知ください、交換いたします。正誤表のみご希望の方もご連絡ください。お送りします。ご迷惑をおかけした多くの皆様に深くお詫びいたします。

発端は、今年の4月の「東方」に掲載された前田年昭氏の書評だったようだ。(こちら)
読めばわかるが、皮肉なことに、この書評自体は、この筑摩の全集からの「セレクション」というかたちの編者の選択が見事であるという好意的なものである。誤植についての記述は、末尾にあり、このセレクションに従って読者はぜひ図書館などで全集のほうにあたってほしいという内容になっており、あわせて前田氏が個人的に作った正誤表を希望者には配布しますというかたちになっている。
ところが、これをさらに取り上げたのがメールマガジン「日刊デジタルクリエーターズ」で、この前田氏の正誤表を取り寄せたところが、その誤字脱字の内容があまりに酷いことにあきれて、この正誤表に添付されていたとおぼしき「解題」という文章を公開した。(こちら)

編著者、編集者は、本文をほとんど読んでいなかったのではないか。引き合わせ校正も素読み校正もなされなかったのではないか(のだと推測できる)。仕事をなめているとしか思えない。こうして、編著者や編集者の仕事はそのまま印刷所に押し付けられた(のだと推測できる)。

という強烈な文章であります。
誤植というのは、わたしのこのしょうもない駄文のブログのことを考えても、ある程度は避けることのできないものだとわたしは思う。だが、やはりこの正誤表をみると、上記の前田氏の怒りはもっともなものに思える。
日本経済評論社の本件に対する対応については、経営的なことを考えると、もちろん良心的なことだと好意的に評価するが、しかし、上記の「お詫び広告」中の「つぶらな瞳を輝かせている当の担当編集者」という文面には違和感を覚えるなあ。たぶん、こいつは自分の担当する本をまともに読んでいない。読んで変だと感じたら、活字になっている筑摩の原本と比較すればいいだけである。それすらこいつはしていない。たぶん、本が好きでもなんでもないのだろう。なんだかなあ、のお詫び広告であります。

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コメント

かわうそさん、始めまして。
グーグルで、とある中国映画のタイトルを打ち込んでこのブログにたどり着きました。
かなり詳しい評価をされていて、とても参考になりました。
ですが、少し気になった事があったのでコメント欄に書かせていただく事にしました。
私の使用しているブラウザーの影響なのか、どういう問題が起こっているのかわかりませんが、私のモニターにはせっかくの文章が「折り返し」の部分で繋がっていません。
他のページも見てみましたが、全頁で起こっているようです。
簡単に言うと、右端がすべて脱字しています。こんな感じです。

ー編著者、編集者は、本文をほとんど読んでいなかー
ーはないか。引き合わせ校正も素読み校正もなさー
ーのではないかー

ちなみに、C&Pをしてみるとちゃんと繋がった文章が現れますので、
ただ画面上の問題だけのようです。
私は、ウインドウズXPのエクスプローラーを使っています。
私も、かなり長くブログを使って書いてますのでご苦労もわかりますので「もったいない」と思い、コメントに書かせていただこうと思ったしだいです。
文字サイズを変更されたら、問題は解除されるかもしれませんね。。
「大きなお世話」ですいません(^^ゞ

投稿: kana | 2007/06/22 02:45

kanaさん 不具合のお知らせどうもありがとうございます。
これは困ったな。わたしの確認するかぎりでは、マックOSⅩ環境のFirefoxとSafari、Windows XP環境下のIEで、右端の文字切れのような症状は出ていないようです。
ブラウザーで文字の大きさを最大にしても、最小にしても、右端が脱落することはなくてちゃんと折り返していますね。
ええと、同様の状態を確認いただいた方がありましたら、お知らせくださると嬉しいです。
また原因と対策について書かれたサイト情報もありましたらよろしく。

投稿: かわうそ亭 | 2007/06/22 12:03

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