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2007/06/14

ハルキ・ムラカミと探偵小説

「文學界」7月号に「村上春樹の知られざる顔―外国語版インタビューを読む」という評論が載っている。書いているのは都甲幸治。村上春樹の父親がお寺の坊さんで学校の先生(インタビューでは僧侶で学校で日本文学を教えていた、てな表現だったかな)というのは、はじめて知ったな。ディープな村上春樹ファンには、物足りないかもしれないが、けっこう面白い評論でありました。

カズオ・イシグロは日本語がぜんぜんしゃべれないって言い張ってるけど、奥さんが言うにはよくしゃべれるらしいんだよね、とか探偵小説の構造を借りて、自分の中味をそのなかに入れるんだ、なんてところは昨日までのエントリー「反・ミステリー小説」と偶然につながっていて、あらま、と思った。探偵小説についてのハルキ・ムラカミの発言。

(前略)探偵小説も好きです。だからといって探偵小説を書こうとは思いませんが。そういったものの構造を使いたいんです。中身ではなくてね。そういった構造に自分で中身を入れたいんです。それが僕のやり方、書き方です。だから両方の作家たちに好かれません。エンターテインメントの作家も真面目な文学の作家も僕のことは嫌いです。僕は真ん中で、新しい種類のことをしているんです。(The Salon Interview)

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コメント

連載記事、とても興味深く拝読しました。探偵小説大好きで、また、カズオ・イシグロの小説も好きな読者として、示唆を受けること、大なるものがありました。『わたしを離さないで』を推理小説と言った人もあったように記憶しますが、もちろん、これは推理小説ではありません。ただ、<構造的>にその手法を使っただけの話、と確認させていただきました。
カズオ・イシグロの小説は、翻訳されたものは全て読みましたが、ブッカー賞『日の名残り』の後の<実験的作品>とされた『充たされざる者』(1997年)は、私にとっては全く楽しくありませんでした。<意識の流れ>みたいな手法で、ついて行けない感じだった・・・
今回とりあげられた『わたしたちが孤児・・・』については、記事を拝読しながら、ああ、そんな小説だったと思い出しました。が、記憶をたどって言うと、むしろ上記『充たされざる者』に続く<意識の流れ>系なんじゃないの? と思った印象があります。
それに較べると『わたしを離さないで』は、雰囲気としては、『日の名残り』に近い(戻った?)と言えなくもない、と思いますが。本来あるべき(私の好きな)カズオ・イシグロのカムバック(?)を喜んでいます。
ところで、探偵小説の醍醐味の一つには、読了後のカタルシスにあると思います。
探偵の役割を<撚り糸>に譬えたのは、さすがカズオ・イシグロ。結末の、糸の配色・織りなす柄、それらがどんな風に提示されるか・・・
『わたしを離さないで』の結末は、(私にとっては)深い悲しみで胸がふさぎ、カタルシスとは別の読後感でした。たぶん、この小説が、世界の綻びの巨大さに、探偵の力が及ばない近未来を提示して見せたからではなかったか。あってはならない、歪んだ未来への恐怖を想像させたからではなかったか。
愚かな読者である私は、この連載記事を、楽しく笑いながら読みつつも、しかし一方で、しばし考え込んでしまいました。。。
余談ですが、日本の探偵小説では、原りょう(寮のウ冠のない字)の全作品や、藤田宜永『巴里からの遺言』なんかが、と~っても大好き、ですョ。長い書き込み、失礼いたしました。

投稿: Wako | 2007/06/14 23:20

補足的な追伸:
<撚り糸>は<よりいと>と読むのですよね。カズオ・イシグロは、ブラインド板の括り糸のことを言ったのですが、しっかりと括れなかった時の結果として<糸・自体>=探偵の方に視点を移したため、このような文章になったと思われます。本来の括るという役割を果たせずとも、なお、<撚り糸>自身のありよう・・・というような。
書き込むときは客観的に、慎重に、といつも心がけているつもりなのですが、しばしば、独りよがりになっています。かわうそ亭さんばかりでなく、カズオ・イシグロにも申し訳ないことです。

投稿: Wako | 2007/06/15 10:14

こんばんわ。
カズオ・イシグロはまだ2冊しか読んでいないので、まだまだ先が楽しみです。次は、オススメにしたがって『わたしを離さないで』を読んでみようっと。
いい小説家は、小説という形式でしか自分の考えを表現できないから小説を書くのであって、小説を読むというのは、とにかくそういう小説を丸ごと読んで「ああ面白かった」と言えばそれで十分なのだと思う。とまあ、そうは思うのですが、ときどき頓珍漢な感想も書いてみたくなったりするのも楽しみのひとつでありまして、お恥ずかしいことであります。(笑)どうもありがとうございました。

投稿: かわうそ亭 | 2007/06/15 22:52

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