新風舎と文芸社
『出版年鑑2007』(出版ニュース社)によると、2006年の新刊点数はおよそ8万点だったそうな。
以下はasahi.comの7月8日付記事。
『出版年鑑2007』が出版ニュース社から発行された。それによると、06年の新刊点数は8万618点で前年に比べて38点増え、過去最高となった。一方で売上高は1.3%減の約2兆2628億円。96年をピークに、長期の減少傾向が続いている。書籍は2.2%増の約1兆95億円だったが、雑誌が3.9%減の約1兆2533億円。
新刊点数を出版社別でみると、新風舎が2788点(取次会社ルートで販売されたものは385点)でトップ、2位が講談社の2013点、3位は文芸社の1468点(同327点)、4位学研1106点、5位小学館937点、6位集英社849点と続く。
新風舎と文芸社以外は、いずれも取次会社ルートで販売された点数。従来はこの販売点数を数えていたが、申告があれば取次会社ルートにのらないものも合算する方式を昨年途中から採用した。この方式によると、05年分から新風舎が出版点数で1位となっている。
ごく普通の本読みの感覚としては、上記の点数のトップ3のうち、新風舎と文芸社というのには「けっ」という感想をもつなあ。
いや、ほとんどこの二社の本は見たことがないので、それはこういう形の出版物に対する偏見だ、あんたは自分の本を出したいという願いをなんとか実現した人たちを馬鹿にしているのではないかね、と言われると、少々困るのだが、まあじつはそのとおりなのであります。(笑)
調べてみると、こういう出版社の商法は「協力出版」とか「共同出版」とか「出版実現プログラム」なんて呼ばれるらしい。
新聞や雑誌に「あなたの原稿を募集」とか「あなたの作品を出版しませんか」なんて広告が載っているのがそれですな。協力とか共同とかいうのが具体的になにを指しているのかよくわからないが、まあ、ありていに言えば、作者と出版社が協力、共同するというのは、著作者がカネを出して、「出版社」が編集や印刷、製本、そして販売を担当する、ということだろう。
これを詐欺商法というむきもあるようですね。しかし、カネを取って「本」をつくらないのならあきらかな詐欺だが、現実に「本」ができていれば、詐欺とは言いにくいような気もする。訴訟になっているケースなどでは、問題は「売れる」ようにちゃんとこれらの「出版社」がやっていないのではないかということが一つの争点であるように見える。原稿募集などでこの商法にカモをひっかけるときは、全国の書店に取り次ぎ、あなたの本が日本中の書店の棚に並ぶんですよ、てなイメージをふりまいて、しかし実際には、まともな取り次ぎもしていないのではないか、という疑惑でありますね。
まあ、はっきり言えばあんまり褒められた商売ではないが、おそらくこの商法にひかかる人というのはまったく箸にも棒にもかからないないような旦那芸の人たちではないような気がする。そういう人は、そもそも自分の「本」などが社会で通用するかもしれない、なんて幻想はもたないだろう。そういう人が、それでも、たとえば自伝めいた本を子孫のために遺したいと思えば、全部、自費出版でやるだろうし、その自伝が一般の本屋で売られていないじゃないか、とは文句を言ったりはしないと思う。(注)
だから、危ないのはたぶん、オレって結構「書けるじゃん」と勘違いしている人である。
そういう意味では、新風舎や文芸社からみると、ブログをやってる人なんかはたぶん絶好のカモ・・・
いや、人ごとではないではないか。くわばら、くわばら。(笑)
(注)
同じように、一部の人気作家を除けば句集や歌集は大半が自費出版か、それに近い方式で、はじめから不特定多数の読者を想定していない。あれは自分自身の記念と知人への贈呈が目的だから、よほど悪どい営業でなければこういう問題はあまりおきないような気がする。
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コメント
歴史書の専門出版社「雄山閣」からあるマイナーな本がでることになり、そのテーマの研究会?の連絡役をつとめていた関係で、書誌部分を私が「補助的に」お手伝いすることになりました(まだ企画段階で、公刊は来年末?)。
で、私もいよいよ全国デビュー!の予定です、といっても、あくまで補助ですから執筆者として表には出ません。書誌学の基本も知らない私には荷が重いと辞退のポーズはとりつつも、いい勉強の機会と引き受けました。誰かが儀礼的に、あとがきの謝辞に名前を出してくれることを、秘かに期待していますが(笑)。
投稿: かぐら川 | 2007/07/19 00:50
そう言えば、そんなお話をされていたなあと、さるさるの「日記内を検索」をつかって「歴史書」というキーワードで探しますと
2003/11/11 (火) 「索引づくり」
というエントリーがヒットしました。
そうですか、いよいよ出版の運びですか。楽しみですねえ。
投稿: かわうそ亭 | 2007/07/19 21:20
薄っぺらだけどフォトブック作ります。
▼
とある出版社二社と
ブログ社二社に写真集の話を持ちかけたところ
作品じたいは良いのだが
携帯データだからと言うだけで
画素数が悪いからと断られました。
一社に至っては携帯だからと根っからのバカにした様子
出版のプロたるものが
携帯だからと本が作れないなんて…と
思案していたところ名乗りをあ思案していたところ名乗りをあげてくれたのが文芸社さんです。
金額もさほど高くなく
)の出版の運びになりました。
相応の自費出版金額にスタッフサポート、編集費用、
全国流通他の費用が加算された程度です。
何より自社が請け負います。と、担当者の誠実な人柄と熱意
批評の細かな受け取り感想と問題提起
と、いうことで文芸社よりミニ本(ビニ本
四社が手に負えない写真を
最強スタッフでいきます。
二月には モノにするように頑張ります。
…まぁ
モザイク・○○集には
ならないとは思いますが…
ネット上色々と叩かれているようですが
噂の拡大に過ぎないと
私は思います。
投稿: マリ | 2013/09/19 06:41
文芸社の自費出版は、先ほど述べた流通までの仕組みを考えると安価であり、極めて良心的な、価格相応のサービスが受けられるパッケージである。これというのが 出版業界に長く携わってきた私の見解である。結論を言うと、文芸社の自費出版費用は正当である。ただ本を出すだけではなく、出版した本がいかに人の目に触れる機会が増えるかという点が重要だ。
倒産した新風舎のようなこともない。別項目で述べたトラブルが多い自費出版社はこのように消えているのが事実だ。現在も成長を続けている出版社であるという事実がある点でそのようなことはないだろう。出版不況の淘汰を経て今後は、本当に情報発信したい著者と、本当に才能のある著者だけが残っていくのではないと私は考えている。それを実現するのが自費出版というシステムであり、支えているのが文芸社だ。
自費出版の最大手として優良なサービスを提供しており、書店流通・著作者保護制度などのサービス、映画化、ドラマ化など実績から判断して、現状は他を選ぶ理由がないと言っていい。
自費出版の本と編集企画の本を同じブランドで流通させていることからも、著者の才能を平等に扱うという本気の姿勢が伺われ、好感が持てる。
投稿: 無記名 | 2013/09/30 05:10