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2007/07/08

「平成秀句選集」(1)

『平成秀句選集』(「別冊俳句」)は、現役の俳人506名による一人十句の自選集。
こういうムックの性格として、ぱらぱらとなじみのある俳人のところを拾い読みしたら、あとは資料として本棚に放り込んでおくつもりだったのだけれど、あんまりわたしの知らない俳人が多いので、これを句会の詠草のようなつもりで読んでみたらどうだろうと、ふと思いついた。
つまり、まず知っている俳人(句集や俳句総合誌でその作品を読んだことがあるとか、評論などでその方の俳句観などをある程度想像できるとか)は除外する。すると、作者の名前と略歴そしてその方の作句信条はついているけれど、わたしにとってはまったく未知の俳人の自選十句が並んでいるということになる。
もちろん、わたしがそのお名前を知らないということは、単にわたしが俳句の世界にさほど詳しくないというだけのことですが、それでもそういう方の作品を千句、二千句と読んでいくということにはなんとなく、「平成俳句」の総体的な厚みとか深さといったものが感じられはしないかと思ったわけであります。
既知の俳人(俳壇に無知なわたしが知っているくらいだからみな有名な俳人)を除外してみようと思うのは、有名な俳人だから、人気のある作家だから、大きな賞を受賞している人だから、という先入観や、権威によるバイアスがどうもわたしにはかかりそうだと思ったからであります。
知らない方ばかりだから、遠慮もいらないし、なんの義理もない。単純に、「あ、これ、すごくいい」と思うものだけに丸をつけていくという方針です。

五十音順で並んでいるので、まず今回は「あ」から「こ」までの186人を見ていく。
この中から、多少なりとも作品を読んだことがあるので除外したのは阿部完市、池田澄子、宇多喜代子、櫂未知子など、41名で、畏れ多いことながら(いやまったく)選をさせていただくのは残る145名の1450句であります。
やってみて痛感したのは、同じ人に複数の選をしたくなるということですね。このあたり、ほんとうの句会であれば、作者が伏せられているので偶然そうなってもかまわないのだが、同じ作者から二句、三句と選ぶのはちと気が引ける。ただ、どうしても波長があう作者というのはあるようで、複数の選をいれた方の自選十句はどれもこれも面白い。

「あ」から「こ」で丸をつけたのが58句。ここからさらに35句まで絞ってみました。

焚火してさうかいつでも逢へるのか  有澤榠樝
春一番鞄の軽き日なりけり      藺草慶子
島唄は半音階よ夜の秋        石川星水女
あやとりは指が覚えてゐる小春    
あを空のどこかに火星蝌蚪生まる   井上康明
コーヒーの一杯分を時雨けり     岩垣子鹿
風にまだ芯が残つて浮氷       有働亨
長き長きエスカレーター百合抱いて  浦川聡子
剥身屋の女房もいいなあ銭葵     大木孝子
しやがみてもこどもになれず蝉の穴  大島雄作
どの山も己の丈に眠りけり      大岳水一路
かなしみの芯とり出して浮いてこい  岡田史乃
櫟山雪の来さうな月上げて      岡本高明
屑籠に英字新聞小鳥くる       奥名春江
くり返す助走西日はさらに西     小宅容義
わたくしが昏れてしまへば曼珠沙華  柿本多映
甚平やおつしやることの御尤も    角光雄
精神的に負けて背高泡立草      加藤静夫
縄跳びの円にすつぽり秋の山     甘田正翠
日傘ゆく法隆寺西一丁目       木内怜子
人にやや離れて生きて草の花     菊池一雄
実むらさきいよいよものをいはず暮れ 
ちやんちやんこ死なねばならぬ一大事 木田千女
敦盛の五倍も生きて新茶飲む
グラマンに追はれし丘の土筆つむ
チューリップわたしが八十なんて嘘
麦生うや哀しくまろき馬の尻     北原志満子
ひと頃のあなたのやうな闘魚かな   櫛原希伊子
死んでから先が永さう冬ざくら    桑原三郎
雛飾がらんどうなるものばかり    神野紗希
ヒーターの中にくるしい水の音
仏壇は要らぬさくらんぼがあれば   小西昭夫
草の花大人も小さくなればいい
にわとりの卵あたたか春の雪
一度くらゐは歩きたからう冬木たち  小檜山繁子

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