« 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識1 | トップページ | 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識3 »

2007/08/12

奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識2

町奉行所から市中の巡回に出る役向きが廻り方。
これを行うのは同心でありまして、与力はこれを行わない。したがって廻り方同心などと連中は呼ばれたようであります。

これには三種類ありまして三廻りといったそうです。

第一が隠密廻りで同心二名。町奉行直轄で、捕縛はせず、もっぱら秘密の探索を任務としたといいますから、おそらく今の公安のようなものだと思えばいいのでしょう。最古参で練達の同心がこの役についた。
第二が定町廻り(定廻りともいう)で同心六名。法令違反がないかどうか管轄の自身番を巡回し、犯人の捕縛も行います。時代劇で八丁堀の旦那と呼ばれるのが、この人たちであります。
第三が臨時廻りで同じく同心六名。これは定廻りの経験を長く積んだベテランを、定廻りのサポートにまわしたのですね。刑事というものは、なにしろ経験がものをいう世界ですから、実質的には後輩の相談役、指導役であったということかと思われます。こういう連中を形容するときに「背中へ胼をきらせた」という言葉があったそうです。いかにも市中見回りの風雪に耐えた同心を言い表しております。

廻り方同心の姿格好は、三つ紋付の黒羽織。これには竜紋の裏がついております。夏はもちろん紗か絽であります。御用箱を背負った供と木刀をさした中間、それに手先を二三人連れて、自身番で「番人!町内に何事もないか」と声をかけて廻るわけであります。
テレビドラマでは、ここで目明かしなんぞから報告を受けて指示を出すことになっていますな。

さて町奉行所に所属する町与力と町同心は、事実上世襲であったようですが、法律上は抱席(かかえせき)という一代限りの役目とされておりました。伜が十三、四歳になると見習いに出て、やがて正式に採用になった。かれらは、町奉行所に居付の者であります。すなわち町奉行その人の家来ではない。町奉行は数年で転役していきますが、町与力、町同心には転勤も転役もない。だから、トップが変わっても、あるいは町奉行所の運営にまったくくらい素人が町奉行になったとしても役所の業務自体には支障がなかった。
ただし町奉行からみると、子飼の家来のようには、かれらを使うわけにはいきませんから、これはちと窮屈である。そこで臨時の与力(これを内与力と称した)として十人を採用することができるようになっておりましたので、旧来の家来を引き連れて着任するということになりました。
サラリーマンを長くやっている方は、こういう光景はおなじみでありましょう。新任の取締役経営企画室長なんてのが本社にやってくると、一緒に副官みたいなのが転勤してきて、古参の部員の冷ややかな視線にさらされる、なんてのとたぶん一緒ではなかろうか。ト。(笑)
もちろん、内与力は臨時雇いですから、町奉行が転役すると一緒に辞めることになります。ただ、こういう人たちは往々にして出世欲の強い野心家であったり、結構切れると自負している人たちであることが多いのでいろいろと問題がおきることもあったようです。
—というあたりを次回はご紹介しましょう。

(つづく)

|

« 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識1 | トップページ | 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識3 »

c)本の頁から」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23898/16084722

この記事へのトラックバック一覧です: 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識2:

« 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識1 | トップページ | 奉行と与力と同心と—捕物帳の基礎知識3 »