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2007/09/02

短歌研究新人賞、応募作を読む(上)

今年の短歌研究新人賞は、吉岡太朗氏の「六千万個の風鈴」に決定した。
吉岡氏は昭和61年8月28日生まれ。応募締め切り時点で二十歳。もちろん若い人には違いないが、去年の受賞者、野口あや子さんは十八歳だったし、そもそも、この短歌研究新人賞の前身である短歌研究50首詠の初期の受賞者である寺山修司も当時十八歳だった。

現在、この賞は未発表30首というのが公募条件。今回の応募総数は591編、うち有効数が519編。内訳は男性42%、女性58%とのこと。

「短歌研究」9月号での選考結果発表と作品掲載は次のようなかたちになっている。

1)新人賞      吉岡太朗   30首掲載
2)次席       石橋佳の子  30首掲載
3)次席       浦河奈々   30首掲載
4)上位候補作    川口慈子   19首掲載
5)候補作      3名     12首掲載
6)最終選考通過作品 18名    10首掲載

以上25名が最終選考に残った候補者である。
なお「短歌研究」には、この最終選考まではいかなかった人たちの作品も次のようなかたちで掲載されている。

7)佳作     63名       5首掲載
8)予選通過作品 約350名     2首掲載

ということで今回「短歌研究」に名前が出た人たちは全部で約440人ということになる。
応募総数との関係でみれば、有効応募数約520のうち440人が予選通過というわけで、まあ規定に適った応募さえすれば、85%の人は、少なくとも短歌研究新人賞予選通過者という「肩書き」が得られるということになりますね。
いやこれは、「短歌研究」の雑誌社としての営業手法(懸賞当選などで雑誌に名前を載せると、その人や知人が1冊以上は買ってくれる、というのは昔からの雑誌商売のからくり)を批判しているのではまったくない。むしろ、このやり方をわたしは好意的に見ている。ただ応募者が、この事情をよく知らない人に「わたしもねえ、短歌研究新人賞、予選通過まではなんとか行ったんです」なんてしょうもないはったりをかますのはやめていただきたい。(笑)

さて、この短歌研究新人賞、最終選考にあがった人たちの作品をみれば明らかだが、一首、一首ずつ歌としての美しさ完成度を見るというよりも、まとめて三十首全体で、どんな心的世界を作者がつくりあげているかが競われているように見える。俳句においてもそういう傾向はとくに新人賞などには多少あるようにも思うが、この傾向は短歌のほうにおいてより強い。俳句では新興俳句のときの、「連作」というのはどうもうまくいかないという反省が、いまでも影響しているのかもしれない。違うかもしれない。

だから、たとえば本誌から、下位の作品の中にもいい歌がまだまだ隠れているのではないかという観点で、8)予選通過作品のところを丹念に見ていってもいいのだが、それはあまりよい鑑賞とはならないように思った。
あくまで30首を通して読んで、その作者の狙いがわかる。たまたま選者が抜いた2首だけで、その作者の資質まではとてもわからないと思うからだ
逆に、そうであればこれらの作品2首だけを読んでなんらかの感想を抱くことには、ほんとうは慎重でなければならない。
それを言った上で、しかしわたしの率直な感想を言えば、上記の8)予選通過作品の大半はまったく感心できない。
選者は6名で、応募者を隠して男女、年齢などを極力偏らないようにして均等に分けて、選をしていくらしいが、まあ、わたしだったら、とてもじゃないが出来ない仕事である。なんという徒労、なんという消耗。

ということで、まあ短歌の目利きが選んだ現代短歌とはどんなものかを知るには、おそらく上記の7)佳作から上の88名を見ていけばよいのではないかと思った。
(この項続く)

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