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2007/09/29

呼び捨て、欧米かよ!

英会話の先生(アメリカ人)の話。
日本の生活も長いし、奥さんも日本人なので、みんなに悪気がないことはわかっているんだけど、日本人って名前の呼び方に問題があるんじゃない、って言う。

たとえばこんな場面。

かれの入会している地元のテニス倶楽部では、新しいメンバーが入ってきたときは、コーチが古手の会員を新会員に引き合わせて紹介するというのですね。
ここでは仮にポール・マクローリーくんとでもしておきましょうか。

コーチの紹介は、たいていこうなるのだそうです。
ええと、じゃあ、うちのメンバーのみなさんを紹介しますね。こちら、佐藤さん、山本さん、田中さん、ええとそれからポール、西田さん、中島さん・・・

うーん、わかるなあ、わたしがコーチでもきっとそうするよ。(笑)

「ね、ヘンでしょ。山本さん、田中さん、ときたらマクローリーさんって呼ぶべきじゃん?なんでわたしだけいつも呼び捨て?」
「マクローリーさんってのは言いにくいよ」
「ちっちち、だめだめ、ぜんぜん言いにくくなんかないよ」
「ポールのほうが親しみがこもっているとか」
「じゃあさ、こちら、吉夫、順一、ポール、とか言えばいいじゃん」
「あのねえ、日本人は名前で紹介しないのは、知ってるでしょ」
「じゃあ、なんで、ガイジンはいいわけ?」

以上は、ほぼ実際の会話の流れです。
さて、ざっと考えて、だれかの名前を呼び捨てにするのは、次のような場合でしょう。

(1)その人が自分の身内の人間である場合。「えっ、孝太郎がそんなことを言いましたか」なんていう場合は、その話し手と孝太郎は、親子、兄弟、親戚、親友などであるということが日本人ならすぐわかる。

(2)その人間が犯罪者だったり、あるいは話し手がその人に悪意を持っていたり否定的に見ている場合。「麻原彰晃がやったんだよ、絶対」なんていうのがこれにあたる。

と、ここまではわたしでも説明ができると思うのですが、どっちもポールくんが聞いて「ああ、じゃあまあ仕方ないね」とはならないなあ。そんならよけい酷いじゃん、と言われそうである。

ところが今日、高島俊男さんの『お言葉ですが・・・』を読んでいたら、こんな箇所があった。(どっちがエライ、「君」と「さん」)

昔から、といってもそれほど大昔ではないがともかく戦前から、文士と役者と相撲取りと野球選手とは、名前を呼び捨てにしても失礼でないことになっている。誰が決めたというのでもないが、まずそういうことになっている。

あ、これはイケルと思いましたね。
ただこれを英語で説明するのは、難しいよきっと。(笑)

(3)呼び捨ての方が自然であるという場合がある。「朝青龍さん、今日帰国しちゃったんだってね」とかは丁寧というよりむしろヘンである。「でさぁ、木村拓哉がそこで言ったの」なんて女子高校生が電車の中で喋っていたら、こいつらは映画とかテレビドラマの話をしていることが了解できる。これが「そのとき木村拓哉さんが言ったの」となると、なんだか現実の世界でキムタクが言ったようなニュアンスになって、普通の人はそうではないわけだから、さんをつけることが誤解をわざと誘導するみたいで、かえってその有名人に礼を失するというような感じになる。

さて、こう考えてみると、ポールくんは、日本語で名前の呼び捨ては、上記の(1)か(2)を意味すると知っているからむくれるのね。
一方で、わたしたち日本人の方は、それをあまり悪いことだと思わない(むしろ好意でそうしているつもりである)のは、なんとなくそのガイジンをガイジンであるということで、その人はまったくの無名な人であるのに、(3)のケースの有名人やスターと同じように扱ったつもりになっているからではないか。そう考えるとなんとなく腑に落ちるような気がするんだけどどんなもんでしょう?

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コメント

おじゃまします。以下は、私自身が、英会話の講師が替わるたびに言っていた決まり文句です。(私の名前を仮に山田花子とします)
My name is YAMADA Hanako, of course, YAMADA is family name and Hanako, given name. Please call me YAMADA, by family name. I feel uneasy when I am called by given name. There is no man who calls me Hanako except only one person, my hasband.
かわうそ亭さんの英会話では、先生と生徒の呼び方はどのようですか?


投稿: Wako | 2007/10/01 12:16

失礼しました、訂正です、husband 中学生以下のレベルでチョー恥ずかしい!

投稿: Wako | 2007/10/01 15:01

前はもう少しメンバーがいたんですが、いまはわたしを入れて生徒が三人という小所帯。

仮に町子さん、邦子さん、俊太郎とします。

わたしたち生徒は全員が先生のことを(本文に合わせれば)「ポール」と呼びます。
先生は二人をマチコ、クニコで呼びます。わたしの呼称はシュンとシュンさんとが半々くらいですね。
わたしは二人をマチコさん、クニコさんと呼び、向こうはシュンさんと呼ぶ。
てな、感じでしょうか。

たまたま今日がクラスのある日だったので、上の話を本人にしてみましたが、
I can understand. Still I was not convinced.
と申しておりました。

投稿: かわうそ亭 | 2007/10/01 22:56

ポーロ先生がどういう風に受け取っているのか勿論分かりませんが、外国人(正確言うと欧米人)の私の感覚から言うと同じ年、同じ地位の日本人と同じように扱われなければよそ者として扱われていると感じます。

投稿: イエン | 2009/08/17 23:04

イエンさん
当然そうだろうと思います。問題は、多くの日本人がむしろ好意のつもりで英語圏の人の名前を呼び捨てにする傾向があって、そのことについてなんの疑問ももっていないことですね。
たとえばフジテレビの「とくダネ!」という朝の番組ではキャスターの小倉智昭が、複数のコメンテイターたちのなかでデーブ・スペクターだけを「デーブはどう思う?」なんて言い方で呼び捨てにしていますね。あれを見て、ああ、ああいうふうにするのがふつうなんだ、と多くの人が思っているのかもしれませんね。

投稿: かわうそ亭 | 2009/08/18 08:17

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