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2007/11/03

服部真澄『清談 佛々堂先生』

2007_1103 服部真澄の『清談 佛々堂先生』(講談社文庫)は、あまり期待せずに手に取ったのがよかったのか、けっこう面白く読むことができた。
「和のトリビア満載のミステリー」というのが腰巻きのキャッチフレーズで、別にこれという事件が起こるわけではないのだが、その世界では知る人ぞ知る通人で数寄者の佛々堂先生が行き詰まった芸術家の新境地を開いてやったり、骨董の不思議な縁を結んでやったりというような内容。
本書には4話の短編が収録されている。それぞれラストにちょっとしたひねりが加えられて、たしかに一種のミステリー仕立てになっている。
この作家、処女作の『龍の契り』が評判になったときに読んで、そのときも感心したことだけはおぼえているのだが、その後はすっかり忘れていた。本書なども軽く読めるのだが、そのネタの仕込みはなかなか軽くはないだろうと思われる。
たとえば、わたしが「ほう」と思ったのは、酒井抱一の下絵で蒔絵師の原羊遊斎の印籠(の贋作)がモチーフになる話(「遠あかり」)で、この原羊遊斎が所蔵していた抱一の下絵集が散逸を免れて大和文華館とボストン美術館に一冊ずつ収蔵されている、なんて箇所である。
大和文華館は隣町にあり、ときどきはその収蔵品を見に行くこともあるが、そんな話は初耳だった。
酒井抱一は、これもなかなか面白い人で、絵師と言いながら、その身分は播州姫路藩主の次男である。吉原通いで有名な通人で、酔った従者を籠に乗せ、自分は歩いて屋敷まで帰ったとか、あるときは暴れ馬をなんなく取り押さえたなんて逸話があったかと記憶する。

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