He is not so busy that he can't go for a walk now and then.
たとえば、いきなりこの短い一文だけが書かれたメモをぽんと渡されて、「ねえねえ、これってどういう意味?」と尋ねられたとします。
一読、すぐに、「ああ、これはね・・・」と答えられる人は、英語がかなりできる方ですね。
ある程度、英語が読める人でも、あくまでそれは外国語にすぎないという人にとっては、ワン・センテンスだけを取り出して、前後の文脈がわからない状態で「翻訳してちょうだい」と頼まれるのは、ちょっと困る。小説などは多少わからない箇所があっても、長丁場ですから、読み進めていくうちにあとから理解できたりするわけですが、そういうことを長々説明しても「なーんだ、英語の本なんか読んでるから、英語がデキルのかと思ってたのに」などと冷ややかな視線を浴びたりして。
ただし、上記のセンテンスくらいなら、一読で意味が正しくとれなくてはだめであります。
え、わたし?いや、あなた、ものにはコンテキストというものがあるのだから、いきなりこれだけ見せられて訳せっていわれても、ごにょ、ごにょ・・・(笑)
行方昭夫先生の英文の読み方に関する本を三冊読んだ。
『英語の発想がよくわかる表現50』(岩波ジュニア新書)
『英文の読み方』(岩波新書)
『実践 英文快読術』(岩波現代文庫)
ある意味で、どれも「打ちのめされる」ような本であります。
いや、嗤われても仕方がないのだが、わたしは英語の読みについては、まあ、そんなにひどくはないだろうと自惚れていたのですね。エンターテインメントの小説はもちろん、ときにはブッカー賞受賞作だって英語で読むことがあるし、まあ、多少、手こずったり途中で意味がたどれなくなるようなことがあっても、それはそれで勢いで読めばかまわないじゃんかと思ってきたのであります。
ところがですね、今回、行方先生の本を読んで、わたしはいかに自分が英語が読めていなかったか思い知らされたのであります。
言ってみれば、わたしは盛り場のストリート・ファイターのようなものでありました。いきがって、無敵の大将のつもりでいたら、たまたまからんだ相手が世界ランキングのプロ・ボクサーだった、てな感じであります。
いや、初心に返ってベンキョーしよう。(笑)
ええと、すこしだけ行方先生のとっておられる立場を紹介しておきます。
岩波新書『英文の読み方』へのコメントとして,数人の英語を教えている方から,「自分はいちいち訳さないで英語のままで理解させるようにしてきた.そのほうが時間の節約にもなると思っていた.しかし,何かの機会に訳させてみたら,浅い理解しかしていないのを発見して愕然としたことが少なくなかった.複雑な英文は日本語に移させてみるべきだと思うようになった」という趣旨の手紙をいただきました.むろん私は同意見です.きちんと読むのが主目的ですが,きちんと読めたか否か,それは日本語に直した場合に,手早く判明するというのが私の見解です.
『実践 英文快読術』p.63
あ、そうだ。
冒頭の英文、蛇足になるかもしれませんが、一応、解説しておきます。これも、『実践 英文快読術』から。(この本にはノエル・カワードの戯曲『私生活』がほぼ丸ごと入っていますから、そういう意味でもすごくお得。きちんと読めなかった方はどうぞお買い求めくださいませ)
He is not so busy that he can't go for a walk now and then.
「彼はとても忙しくないので,時々散歩に行けない」では,何のことやら不明です.not が否定しているのはどの部分かを考えるのが大事です.この訳は so busy だけを否定していると取ったので,混乱したのです.そうではなく,so busy that he can't go for a walk now and then 全体を否定しているのです.それで,まず否定されている部分を「時々散歩に出ることも出来ないほど忙しい」と捉え,これ全体を否定して,最後に「というようなことはない」とすればよいのです.p.46
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