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2008/02/17

アレクサンドリア四重奏

ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア四重奏』四部作をやっと読み終える。
今回の「月刊みすず」の読者アンケートでも、何人かの人が、昨年印象に残った本としてこれをあげていた。もうずいぶんむかしの作品(英国での初版が1957年)だが、昨年に新版が、初版のときと同じ翻訳者によって刊行されたのですね。もちろん、わたしは読むのは今回がはじめて。

言うても、たかだかハードカバーの本が4冊にすぎないので、二週間もあれば十分読めるくらいの分量なんですが、わたしの場合、はじめの「ジュスティーヌ」を読み終えたのが去年の12月26日、「バルタザール」が1月19日、「マウントオリーヴ」が2月6日、そして最終巻の「クレア」が今日と、なかなか一気に読めるような軟弱なヤツではなかった。(笑)

よかったですか、と訊かれると、すごくよかったですと、いばって答えたくなるのではありますが、じつはこれは読み通すのにすごく苦労したので、読了したことに対する「自分を褒めてやりたい」症候群のせいかと思われます。

はっきり言って、最初の「ジュスティーヌ」を読んで、あ、もうやめ、これは合わんわ、と思ったね。ようわからん。
しかし、どうも気になるので、「バルタザール」を読むというと、ますます、ようわからんのであります。(しかしその文章の濃密さや詩の毒には酔ってしまう)
こうなると、次読んでも、やっぱりようわからんのやろか、と思うよね。ところがですね、困ったことに「マウントオリーヴ」読むと、これが予想に反して全然よくわかるんだなあ。(この巻は間違いなく面白い小説です)
で結局、最後の「クレア」まで引きずられてしまった。通読すると、まあ、ようわからんところも残るのですが(と言っても、「わかる」ために読み返す気には当分はならん)さすがに、いや、こらすごいわな、ということになる。はいはい、ゲージツやね、と半分皮肉をこめてですけれども。(笑)

この『アレクサンドリア四重奏』は三島由紀夫も絶賛していたそうですが、そういえば『豊穣の海』もこのダレルを読むと、その影響がどこかに感じられるような気がしないでもない。(まあ表面上はぜんぜん似たところはないけれど)

ところで、冒頭に書いたように、この四部作は翻訳者である高橋雄一が、大幅な改訳をしたもの。略歴などから逆算すると、最初の翻訳をおこなったのはまだ27歳か28歳のころであったはずです。
「クレア」の「訳者あとがき」に当時のことが書かれている。
出版業界の約束事などなにも知らなかった20代の若造にこの仕事を振ってくれたのは、当時名編集者として知る人ぞ知るという坂本一亀だった。

五十年前の初夏の日射しの明るい日曜日に、窓を開け放って仕事をしていると、同じ沿線の二駅ほど離れた町に住む坂本が自転車で訪ねて来た。散歩の途中だと言っていたが、心配になって様子を見にきたということもあったのだろう。後ろの台に五、六歳くらいの男の子が乗っかっていた。

—とここまで書けば、やあ、そうでしたかと、このあとの展開がわかる人にはわかるだろう。この荷台の男の子、坂本龍一なのでした。

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コメント

こんばんは。
僕も実はこの本、昨年の夏休みの読書に・・・と購入したものの、そして、随所に素晴らしい文章があるのだけれど、どうにも読みにくく、「バルタザール」で挫折してしまったのでした。気持ちを入れ替えて「マウントオリーヴ」から再会しようかと思います。

投稿: maru | 2008/02/19 21:56

こんばんわ。ああ、一緒ですね。この小説を読むのは、なんだか息を詰めて泳いでるような感じで、とても一気になんか読めない。でも、まあ、「マウントオリーヴ」から視界がよくなりますから、ぜひどうぞ。

投稿: かわうそ亭 | 2008/02/19 22:28

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