穂村弘の短歌
穂村弘の『シンジケート』と『ドライ ドライ アイス』の新装版が図書館の書架に並んでいた。
とくに『シンジケート』はなかなかオシャレである。装釘は藤林省三。
穂村の歌は、ブーフーウーとか、降りますランプとか、ゆひらとさわぐとかは、するすると口をついて暗唱できるが、よく考えたらどれも現代短歌のアンソロジーなどから、ノートに抜き書きして憶えたもので、歌集として読んだことはこれまでなかった。だって、図書館などにも置いてなかったもんね。
この新装版は、どちらも2006年に沖積社から出たものだが、こうして歌集として再度、一般の読者の手にとれるかたちで流通するのはとてもうれしいことであります。
「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪に背中に
新品の目覚めふたりで手に入れる ミー ターザン ユー ジェーン
ねむりながら笑うおまえの好物は天使のちんこみたいなマカロニ
ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり
「自転車のサドルを高く上げるのが夏をむかえる準備のすべて」
抜き取った指輪孔雀になげうって「お食べそいつがおまえの餌よ」
「海にでも沈めなさいよそんなもの魚がお家にすればいいのよ」
(『シンジケート』)
「奇麗なものにみえてくるのよメチャクチャに骨の突き出たビニール傘が」
「人類の恋愛史上かつてないほどダーティな反則じゃない?」
(『ドライ ドライ アイス』)
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