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2008/02/16

小さい牛追い

2268149021_3781ef6b87_2 岩波少年文庫の創刊は1950年12月のクリスマス。
『宝島』『あしながおじさん』『クリスマス・キャロル』『小さい牛追い』『ふたりのロッテ』の5冊が第一回配本として発行された。
このなかで『小さい牛追い』という本のことはわたしはこれまで聞いたことがなかったのだが、このシリーズの50周年を機に編まれた『なつかしい本の記憶』には、いろんな人がこの本がどんなに素敵だったか、その思いを語っている。
訳者は当時この少年文庫の創刊を担当した石井桃子さん。

その『小さい牛追い』の新版には「解説」として当時15歳だった中川李枝子さんが思いでを寄せていらっしゃる。
李枝子さんのお家では、お父さんの東京出張のお土産として、子供たちにこの岩波少年文庫を買って帰るのがならわしだった。(敗戦後5、6年のことである。日本中が活字に飢えていた)
もちろん、兄弟姉妹に一冊ずつというような贅沢はできない。みんなにあげるのだからねと言われていた。当然、子供たちもそれで納得し、岩波少年文庫はお友達にも貸すことの出来ないみんなの宝物であった。

2266305629_35461ae09a_3 ところが、この『小さい牛追い』だけは、9歳の妹が、中をぱらぱらと見るなり「この本はわたしのもの!」と断固として言い張ったというのでありますね。
その理由は、最初のほうにある挿絵がどうも気に入ってしまったかららしい。この絵の小さな女の子と自分をすっかり一緒にして夢中になっちゃったのであります。

『小さい牛追い』というのはノルウェイの北の方の農家が舞台です。子供が四人おりまして上の二人が男の子。下の二人が女の子。どの子も自分の牛を一頭持っています。(いいなあ)
この絵のところをちょっと引きましょう。

まい日、夕方、おかあさんが牛乳をしぼる時間になると、インゲリドとマルタは、それぞれ、小さい箱にこしかけて、おかあさんが顔をぶたれないように、じぶんたちの牛のしっぽをつかまえていました。

うーん、これは、まいったね。(笑)
ところで、中川李枝子さんは、のちに『いやいやえん』で、作家としてデビューしますが、この本の絵を担当したのが、『小さい牛追い』に夢中になった妹の百合子さんでした。
『なつかしい本の記憶』には、このおふたりの対談が収められていて面白い。オススメです。

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